恐るべき老人と再びプレー・・・恐るべき老人パワー<その3>

2006.06.15
私より2年遅れで入社してきた後輩は関西に住んでいたが、ごく最近、友人と信越地方へゴルフ旅行に出かけた。プレーした翌日もゴルフが組まれていたが、スタート時間になっても来ないので、ゴルフ場のロッジの部屋を開けると亡くなっていた。心筋梗塞だったとのこと。好きなことをし、好きなゴルフ場で永眠するとは、いい死に方に違いないが、62歳まで勤務して3年後に他界は余りにも早過ぎる。

第16話で取り上げた80歳の恐るべき老人パワーの持ち主とは、その後私が通っているゴルフ練習場で度々出会って親しく会話する間柄になった。練習場が私と彼の自宅の中間に位置するから、共に同じ練習場に通っていたのである。私はアプローチが下手なので、指導を仰いだこともある。
ある日、ゴルフコースで久し振りに出会うと、彼は前立腺がんが見つかり入院治療していたとの話が出た。年齢は私より一回り以上年長であるけれど、前立腺の悩みに関しては私の方が先輩なので、私はいろいろ体験なり知識を披露した。彼は高齢なので開腹手術はせず、レーザー照射とホルモン注射で対処されている。ホルモン注射は男性ホルモンを抑え、女性ホルモンを投入するのであるから、身体が女性化する。当然ゴルフは飛ばなくなってしまう。このことは第20話でも触れた。
そのことを話すと、「まったくその通りで嫌になる。今日も同伴の女性より飛びませんよ」と嘆いておられた。後半のスタート時点で私はティショットを見ていたが、本当に女性の方が飛ばしていた。さすがの彼も高齢とホルモン注射でシングルハンディを維持するのは無理だろうと思った。「もう、スコアよりゴルフ出来るその健康に感謝して楽しんで下さい」と慰めていたのである。

それから6ヶ月が経過した。一人でコースに行くと偶然彼と同じ組み合わせとなり、互いに「いい人と一緒になった」とエールを交換した。同伴者は彼の友人Bさんで76歳。ティショットを綺麗なフォームで飛ばすので尋ねると、最高ハンディは2で、63歳までハンディ3を維持し、クラブの代表選手を務めていたと・・・凄い人がここにもいた。もう一人は単独で来たCさんで66歳。現在のハンディはAさん8、Bさん9、Cさんは不明である。

Aさんは、リハビリトレーニングに励んでいるとの言葉通り、体力が回復し飛距離が戻っているのに驚く。相変わらず、アプローチとショートパットが上手い。長いロングホールでも第4打をピン傍につけ、パーを拾う。バンカーからパーを拾う。Cさんは「えらい人達と一緒になった」とビビッてしまい、ミスの連発でスコア不明。

終わってみれば、Aさんは40・40の80、Bさんは85。私は集中力を切らさないように踏ん張った成果があった。3つのチップインが効いて、OB1つ、1ペナルティがあっても40・39の79。5ヶ月ぶりの70台に気分が良かったが、こんな高齢で、病後でも好スコアで回る恐るべき老人パワーに心酔してしまった。人柄は温厚だし、理想的な老人ゴルファーである。できることなら、私もこんな年寄りになりたいものである。


− 私の名前は渡若造 47話 −

前へ 次へ