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その日は、突然やって来た。 オーストラリア支局長メルウェイ

 

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NSWシニアクラシック。日曜日の朝6時の飛行機に乗ってシドニーへ。会場のレイクスのメンバー、ビンスとキースと9時半から練習ラウンドをすることになっています。
彼らと会うのは、ナショナルの試合以来ですから、1年ぶりです。
午後から雨が降るという予報ですが、、少し腰がうずくので、雨は近いのでしょう。運良くというのでしょうか、9番のティーに来ると雨が降り出しました。
雨脚も強くなり出したので、風邪を引いても良くないからと、やめることになりました。
 
マッサージを2時間、夜の10時には寝てしまったので、休養も充分です。翌朝起きると、曇りでしたが、薄日もさしているので、雨は大丈夫かな・・・だけど風が強い。
ゴルフ場に着くと、久しぶりの顔があちこちに見えます。というのか、向こうはいつもの光景で、私が久しぶりですね。スタートは10時44分、私の後ろはゴードンで、その後ろがキムです。
練習場でボールを打つも、少し腰のあたりに違和感。ですが、ゴルフが出来るかどうか、心配をするようなものではないので大丈夫。
風がどんどん強くなって来ました。私の組はグレッグ・スタンフォード、なぜか、もう一人もグレッグです。前者グレッグは、何度も一緒にやっているし、ステファンと同じゴルフ場のメンバーということで、試合の間は、毎日食事も一緒に出掛ける仲です。
 
メルウェイ。この風じゃ、70台で来れば、充分だから慎重に行こうね。とグレッグ。この条件で、私には70台は絶対に無理。そういうと、もう一人のグレッグに、あんなこと言ってるけど、見ててよ、メルウェイは全然、曲がらないからさぁ・・・上手いよ。・・・グレッグは最近の私を知りません。
3番ホール。ティショットはセンター。セカンドは残り140y。アゲインストが強いので6番。左に飛んだボールは、距離が足りていない。バンカーではない、砂地。足跡の中、PWで打つと、オーバーして奥のもじゃもじゃの中へ、9番で何とかフリンジへ。パターを使って寄せるも、寄らず入らず。何とトリプル。
ボギーは出るし、たまにはダブルボギーも出ることはありますが、試合の時は、まず、大たたきを避けるようにラウンドするので、トリプルボギーを打つことはありません。
 
パー3で、バンカーに打った際、ボールがバンカー奥の傾斜に止まっています。傾斜といってもかなり強いので、普段なら戻って平らなところに止まるはずですが、少しくぼみがあったその中に、納まっていました。結局、グリーン方向には打てないので、反対側に出しましたが、今度はディボットの中へ。バンカー越えになるので、ピン方向というより、どこに打てば、グリーン上に止まるかを探します。ピン方向ではありませんが、向こう側の傾斜の強いところに打てば、必ず戻るだろうと思って打つと、またその強い傾斜のところにボールが止まります。確かに古いピッチマークに掛かっていますが、どうしてそこに止まったのか分かりません。下りで7mも曲がるようなラインで2パットではいけません。
 
打ち下ろしのパー4、池はあるし、狭いホールですが、アゲインストの中、ドライバーで真ん中へ・・・行ってみるとボールが見当たらない。池にでも入ったのかと思いましたが、歩いていく中、見つかりました。良く見えなった原因も分かりました。ボールが柔らかなところに着弾した際、粘土質の土に潜る。その後で、バウンドして、フェアウェーにはありましたが、ボールは黒い達磨。すぐ前にボールが刺さった穴が開いています。ピンまで80y、びっしりと粘土がついているので、どこに飛んでいくのかすら分からない。
Pwで打ったボールは、粘土のプロテクトで音もせず、グリーンの手前に。いつもなら、そんなボールを打てば、悪くとも、ボールにビッシリついた、粘土、土はほとんど取れますが、まだビッシリとついています。Swなどで打った場合、どれぐらい飛んでくれるのか分かりませんから、8番で転がすことに、グリーンに乗って転がるボールは、左右に揺れながら傾斜で左へ3m。マークしたボールを見ると、粘土がこびり付いているので、タオルでふき取れません。爪で削り落とす感じです。
こんなこともあるんだなぁ・・・しかし、このパットを決めてナイスパー。
ショットは良くないのですが、ことごとく信じられないことが起こる日です。
パッティングは良いんですよね。ここまでトリプルを4回も打っていますが、パーも7回、そのうち1パットのパーが6回もあります。バーディーも2つあるので、パッティングは決して悪くありません。
 
次のティーに向かうと、前の組がまだいるので、その前の組がトラブっているようです。雑談の中で、もう一人のグレッグが、先日やっとNSWゴルフクラブに入れたんですよ。
そういえば、クリス(NSWゴルフクラブのプレジデント)が10年待ちだといってたっけ。
彼の息子はジュニアメンバーだそうですが、それでも8年待って、やっと入れたそうです。ザ、オーストラリアン(母音の前ですからザでなく、ジとなりますが、こっちでは、オージーと呼んでいます)それとNSWゴルフクラブは、中々入れないようです。
この数年、メルボルンは寒くなって来ているし、そのうち、もう少し暖かなところに引っ越そうかなぁ・・・そういうと、グレッグがこっちにおいでよ。こっちは暖かいぞ・・・
もちろん冗談ですが、8年も待つんなら、今からNSWゴルフクラブに申し込んでおこうかな・・・取り合えず、クリスがいるから、じゃ、グレッグも、私にサインしてくれる。
もう一人のグレッグが、もちろんだよ。友達もたくさんいるから、任してよ。・・・ステファンだっているし、こっちに来るんなら、うちに入るんじゃないの・・・グレッグが不満そうです。ステファンやグレッグがいるぐらいだから、ろくなゴルフ場じゃないでしょ。・・・入らない入らない。軽口をたたいては、大笑いしました。
 
次のパー5、ティショットはセンター。セカンドは左が池なので多少、右サイドへ。共に悪いボールではありません。
行ってみると、左足下がりがきつく、どう考えてもボールを上げることが出来そうにありません。池越えの145y、強烈なアゲインストですから、考えた末に池の手前に打つことに・・・池までは60y。ウエッジでちょこんと打つと、ボールは何と池の中へ。私には理解が出来ません。何故なら、池越えといっても、極端な話、5yも先に行けば平らならいになるし、池にギリギリに打つ必要もない状況下ですから、池に打ってしまうなど、あり得ないことです。
池の手前にドロップすると、よいライですが、ボールは沈み加減で、気持ちが悪い。左下がり、右足寄りにボールを置いて打つと、やや右目へ、グリーンに向かうには橋を渡りますが、その橋の欄干にボールが当たり、池の中に・・・再度、ドロップすると今度はライも良く、素晴らしいボール。2段グリーンの上にあるピンに向かって一直線。ピンの手前に落ちたボールは、何故か戻ってしまい。強い傾斜もあるので10m。弱いと戻るので強めに打つしかありません。
何とこのホールは10回です。
 
10というスコアは、約40年前、ゴルフを始めたころ、OBを連発したパー4、フレンドシップでやったのを覚えています。私のゴルフ人生に於いて、1日にトリプルボギーを4回も打った記憶はありません。
17番のパー5、池を超えるには170yぐらいでしょうか、池は左サイドに大きく広がり、260y先にまた入り込んでくるので、手前の池は、何ら気になりませんが、今日のようなフォローの時は、先の池が気になります。グレッグは3wでナイスボール。もう一人のグレッグもフェアウエーへ。私はドライバーを短く持って軽く振る。ナイスボール。
刺さったままのティーを拾い上げて、ポケットにしまう際、信じられないことを目にします。何とボールが急に失速して池に入りました。なに、なに、なに・・・グレッグが私を見て、どうなってんだい。とそんな表情。
ルール上、3打目は池の手前から打てますが、とても不思議な感じがしたので、もう1度ティーから打つと、同じようなボールですが、はるかに池を越えて行きます。
歩きながら、メルウェイ、今日は何かおかしいことが起こっているようだ。体は大丈夫かい?とグレッグ。その時、私はスコアカードを確認していました。普段なら、そんな必要もありませんが、確認しなければ分からないほど打っているからです。
グレッグ、私は大きな決断に迫られている。今日でゴルフをやめることになると思う。・・・何言ってんだぁ、意味が分からない。
 
1カ月ぐらい前になりますが、ジュリアンとの会話の中で、ケンがエージシュートをしたということから、メルウェイなら70歳を過ぎたらチャンスが来るんじゃない。と言われたので、体力も技術も落ちていくのだから、可能性があるとすれば、77歳を過ぎた辺りではないか・・・一方で、もっと早くゴルフをやめるかも知れないし・・・どうして?・・・そんな会話になりました。
初めてゴルフをした時のスコアが99回で、それが私のワーストスコア。始めの1,2年は90回以上というスコアもあったと思うが、記憶している限り、40年以上は90を打っていないと思う。その時が来ないと、なんとも言えないが、感覚的には90を打ったら、多分ゴルフはやめたくなるんじゃないかな、そういって笑いました。しかし、そんな日が来るとしても、向こう10年はないだろうと思っていました。・・・90打ったらぐらいでやめるわけないでしょ。ジュリアンも笑いました。
 
3打目をティーから打った時点で、OBのようなものですから、恐らくこのホールは7になります。そうすると、私のスコアは18番を残して19オーバー。最終ホールでバーディーを取っても90回です。
この現実に直面した時、とても冷静で、私の中に迷いは一切ありませんでした。今日でゴルフはお終いにしよう。次の瞬間、頭に浮かんだのは、明日のゴルフはどうしよう。また、月末にエントリーしてあるNTシニアをどうするのか?
レストランに行くと、顔見知りの人たちが集っています。私の話を聞いてグレッグは、一応の理解はしているようですが、それでも、メルウェイ、シニアになって、これから4,5年が1番活躍出来る時なんだよ。何で1回ぐらい打ったからといって、そんな馬鹿な決断をするんだ、ゴルフ人生はこれからずっと続くんだぞ。
彼の言っていることはもっともでしょう。私とて、こんなに、その日が早く来るとは、思ってもいないし、何をどう考えても、今日は考えられないことが次々に起きました。
 
私は普段、夢も見ることなく寝るタイプですが、その晩は、今日のゴルフ、なぜか、悪いホールだけをプレーしている夢を見ました。目が覚めた時、昨日までは、試合2日目をどうするか。それを考えていましたが、ゴルフをやめると決めた上は、これ以上ゴルフをする気にはなれません。
会場のオーストラリアンに電話をして、腰の状態が悪いので休みます。そう連絡を入れました。
メルボルンに戻るとすぐに、次の試合をキャンセルしたのですが、その際、何気なくカレンダーを見ると、更に不思議なことが分かりました。私のゴルフが最後になった日は、5月16日です。偶然にも、私がメルボルンに永住した日が8年前の5月16日、その上、数十年前、明治記念館、鳳凰の間で結婚式を挙げた日も5月16日なんです。何か因縁めいた感じですね。