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加齢と仲良しになろう。 オーストラリア支局長メルウェイ

私自身、歳を取る、取ったという事実を認めている。受け入れている方だと思っていますが、それでも、ふと気づいた時、知らずのうちに自分の腕に白いものが混じり、短い時間でまた増えた。そんなことを、度々実感させられるので、私が感じているより、明らかに進んでいるのだと思います。

5年半前、私がここに来た際、私のドライバーは9度の70gのXシャフトがついていました。すぐXシャフトには限界を感じてSシャフトになりましたが、同時にロフトが9.5度に変わりました。ところが1年ももたず、ボールがドロップするようになってしまい、10度、10.5度となりました。
それに呼応するように、シャフトもやや長めになったのですが、それはシャフトの利きをややソフトにする為でした。55歳になって疲れやすく感じたり、少しの異変が長引くことも実感しています。昨年の10月にはついに70gから60gのシャフトに換えました。
40代はスペックを変えることなど、全く考えたことすらなかったので、やはり50歳を過ぎた頃から、体力が落ちていく自覚症状を日々感じています。

こちらの人はジムが好きで、大げさでなく、ほとんどの人が通っています。朝5時には開いているので、仕事の前に毎日通っている人もいるし、パーソナルトレーナーを付けている人も少なくありません。
私の場合、どうしてもジムは好きになれないので、水泳をしていますが、他の人との大きな違いは、行くことが習慣になっていて、むしろ行かないと気持ちが悪いと思っている人たちに対して、私の場合、何回行っても、嫌々行ってることです。

長年ゴルフをしていますから、身体が覚えている、頭の中にイメージが出来ているということは、経験を積んでいる我々世代のゴルファーの強みでもあります。
ボールが飛ばなくなったり、若い頃には絶対になかった、知らぬ間に違うクラブを持ってしまう、なんていうのもありますが、アプローチだったり、経験からくるイマジネーション、飛ばなくなった分、曲がらなくなったなど、良い点もあるのでスコアだけをみればそこそこに出来ているのも事実です。
55歳を過ぎて特に感じるのですが、頭の中で理解していることをしようとしても、身体が思い通りに動かなかったり、イメージしたスイングをしようにも、上体は上手く回らない、下半身が我慢できないと、体力の低下と共に、体幹が弱くなっていることが大きな要因だと私は考えています。
ですから、筋力を付けるためでなく、衰えを少しだけでも、先延ばしにしてもらえるように、水泳に行っています。

以前、こんな人は上手くなる。と書きました。シニアの試合に出ている上位選手に共通していることがあるとすれば、どうしたら良くなれるか?を追求するなかで、スイングの改造といえば、ちょっと大げさですが、誰もが考えたこと、思いついたことをすぐに取り入れ、変更していくことです。
それからもう1つ、加齢を受け入れる。言い換えれば、体力や身体の変化に敏感に反応して、使用ギア、ゲームプランを常にリニュアール出来る人でしょう。

私の場合、何故か試合の直前になると、こうなれば良くなるのではないのか?と、突然、思いついてしまう悪い癖があります。
周りの人からは、悪くないのに何で変えるの、試合が終わってからでも良いでしょう!そうよく言われますが、良くなる可能性があるのに、それに手を付けないでは、いられない性格のようです。
私は特にパッティングに難があるので、ラウンドの前のパッティンググリーンであれこれやってみるのですが、これは良さそうだと思うと、仮にその日が試合でも実際にコースでやってしまいます。
ほとんどの場合は失敗に終わるのですが、そんなことを繰り返して、今がある、上手くなった。とも考えています。

トップ選手達は、会う度に、こうした、こう変えているという話をします。デニス・デールはオーストラリアシニアの後、レストランでしきりに、今こう変えているから、もう少ししたら楽しみだ!と、ジェスチャーを交えて、私に熱く語りました。
彼は既に65歳、オーストラリアシニアアマを2度勝っているし、もう1つのメジャー、マッチプレー選手権も勝っています。5歳違いのステファンが現れるまで、2年連続NO1プレーヤーでした。今でもナショナルチームのメンバーですから、勿論、素晴らしいのですが、やはり年齢もあるのでしょう、少し力は衰えて来ていると思います。
デニスは近い将来ナショナルチームのキャプテンになる人材だと思いますが、競技人生を考えれば、そろそろといった頃合いでしょう。
しかし、ゴルフに対する情熱は全く衰えず、こうしたらきっと良くなると力説するのを目の前で見た時、もうそんなことを考えずに試合を楽しむだけで良いのにと、正直なところそう思ったのですが、反面、こういった考え方、こういう取り組みを常にやろうとする人だから、NO1になれたんだなぁ、とも思いました。

私から見えるトップ選手と、そうでない選手の違いで、もっとも顕著なものは、加齢を認識して、対応出来るか否かでしょう。
ランキングトップ10の選手は、それぞれの地元の州内ではNo1の選手です。そのトップ選手が集まる中で、トップ6として、ナショナルチームに入れる人と、そうでない人がいます。ではその違いは何なのか?
残り200yだとしましょう。トップ選手といえども、乗せられる可能性は50%以下かもしれません。しかし、誰もがそこに打てる能力は持っています。
中にはとんでもないパワーの持ち主がいて5,6番で高いボールを打ってしまい、若い人と同じような攻め方を出来る人もいるかもしれません。
しかし、大半の選手はUTだったりFWを持つでしょう。

我々の年齢になると、ヘッドスピードは明らかに遅くなりますから、特にロングアイアンを使う場合、ボールが上がりづらくなり、キャリーする距離が減るので、グリーンに届かせる場合、直接グリーンに打つのは難しくなります。グリーンに直接打っても、スピン量が足りませんから、奥に行ってしまうことが多くなります。
先日、VICシアニで一緒になったジョン・バウンティングという選手は57歳、ロイヤルパースのメンバーで現在ランキング9位の選手です。身体は大きくありませんが、鍛えているので凄いパワーです。

飛距離も出るし、ほとんどのクラブをそつなくこなします。
そんな彼も400yを超えるパー4では2回ともボギーでした。1度はキャリーが足らず手前のバンカー、2度目は大きく左に打ってしまいました。なまじパワーに自信がある人が陥りやすい形です。
確かにパワーがあっても、既にロングアイアンでスピンの利いた高いボールを打つのは難しい、言い方を変えれば、打てる時もあるけど、確率が悪い。
もし彼が自らの衰えを受け入れていれば、UTや7番ウッドなどを使ってもっと確率の良いゴルフが出来ていると思うし、このもったいない1打を何度か拾うことで、また取りこぼさなくなれば、ナショナルチームにも入れると私は見ています。彼と同じウエストオーストラリア地区にはイアン・マクファーソンという素晴らしい選手がいます。全英シニアの練習ラウンドで一緒にやりましたが、彼の穏やかなゴルフ、長い距離を残して厳しい状況ですら、何とかグリーンの付近には打てますよ。そんな懐の深さを醸し出すゴルフをジョンには期待したいです。

現代のクラブの進化は素晴らしく、今この時代にシニアになった我々はラッキーなのかもしれません。体力の衰えをカバーしてくれる道具が出来ているのですから・・・
鍛えぬいて何とかしようと考える人より、衰えを把握して、スイングやクラブをアジャストする。そしてゲームプランも枯れたものにかえられる人が、長年に渡り安定した成績を残しています。新陳代謝の激しいシニアの中、そんな人たちだけが、生き残れる気がしています。シニアの場合は幾ら才能に恵まれている選手といえど、トップレベルを維持できるのは、せいぜい10年程度でしょう。どんなに鍛えたりしても、体力的な限界はありますから・・・過去の成績を年代別にみていくと、短い期間ではググッと台頭してくる選手もいますが、それを数年に渡り持続してくのは、相当難しいと思われます。毎月、毎試合55歳になって新しい選手が出てくるわけですが、その中の数人はある程度の成績を残しています。
昨年は、私もその中の一人でしょう。

しかし、その者達が翌年以降良い成績を残せるということでもありません。
経験を積む、コースを覚える、友達を作る。過去の成績を見ると、そういうプロセスをなくして、突然NO1選手になるという例は過去に1度もありません。
長年NO1に君臨しているステファンとて、1年目は1度も勝てなかったし、ランキングのトップ10にも入っていません。
2年目以降、トップ選手になる選手は1人いるかどうか、そんな程度です。何故ならトップ選手たちは、そこに入るまでの戦いを勝ち抜いた選手ですから、他の選手に比べると頭1つ2つ抜けているからです。
我々のような選手が、そこそこの成績を残しても、毎回、入ってくる新人も、どんどん来るわけですから、その中で更に、勝ち抜いていかないと上には行けません。

私自身、HCなどから考えて、イケるイケると、安易に考えていたのですが、ステファン、ポール、ゴードン、彼らと自らを比べてみると、今の私では確実に何かが足りません。その辺りを改善出来なければ、私も過去にいた大勢の選手のように、ちょっとは目立ったけど、いつの間にか、消える選手になってしまいます。

30代後半40代の人たちで、上手くなりたいと思っている人はたくさんいます。レッスンを取り練習もしていますが、彼らとて既に若くはありません。
プロにこう教わったと取り組んでいるのを見ますが、中にはこれは良くないと思うケースも多々あります。彼らの多くは、PGAの若手のスイングに取り組んでいるのですが、子どもの頃からやっているならまだしも、ある程度の年齢になった人たちがそんなことに取り組めば、ほとんどの場合、どこか故障するか、悪くなることはあっても良くはなりません。
プレー中は良い状況判断を求められますが、同様に自身に対する状況判断も大切ではないか、そう思っています。
写真はフリンダース。先週行って来ましたが、海岸線の景色が抜群のコースです。