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ゴルファーが育つ土壌 オーストラリア支局長メルウェイ

ゴルフに興味のある子供たちにとって、オーストラリアは抜群の環境であることは既に書いています。それは彼らだけでなく、ジュニア、若い人たちにも言えることでしょう。
そしてシニア世代となった我々に対しても同様です。
色々な面でサポート体制もしっかりしていますし、全てのカテゴリーに対する試合の多さも、レベルを上げるための大きな要素だと思います。小さなところでは、共通のHCがあることで、どこに旅行に行こうが、その地で開催されているゴルフ場のコンペに参加出来るし、各州で開催している公式な試合にも、他州の人が出たければ何時でも参加出来ます。

我々シニアを例に取っても分かるように、ランキングイベントとしてオーストラリア全土の試合が毎月組まれているだけでなく、ビクトリア州内でも20試合程度組まれていますから、上位者は掛け持ちの人も多く、毎月州外である試合の合間に、住んでいる州の試合があるのですから、結構忙しくなります。その上、ゴルフ場で週に4,5回は競技会もありますから、5月から振り返っても、試合の練習ラウンド以外は、全て競技会への参加をしていることになります。
試合慣れという言葉がありますが、どんどん経験を積んで、上手な人たちとやることで更にレベルが上がり、上手な人たちは、互いに切磋琢磨するということになりますから、相乗効果が出る環境が整っているといえます。

上手い人たちが更に上手くなる環境もありますが、そうでない人たちが下剋上のごとく、這い上がる環境も出来上がっています。クラチャンにもB、C、Dグレードとあるし、上手い人たちを除いた試合で4,5試合はマッチプレーの競技会やフォーサムなどあらゆるゲームが組まれています。クラブ対抗もジュニアペナント、ペナント、シニアペナントとそれぞれありますが、インタークラブと言って、将来の選手にということでHC10〜20ぐらいの人たちのペナントもあります。
ですから、彗星のごとく現れてくる選手も珍しくはありません。

広大な土地はあってもオーストラリアは人口3千万人程度しかいません。それでもアメリカのPGAツアー、ウエブドットコムツアーに数十人を送り込み、アジア、ヨーロッパにもたくさんの選手が活躍しています。
日本ではジュニア、学生時代にアマとして活躍し、そのままプロに転向する場合が多く、昔ながらの研修生上がりの選手が活躍するケースは難しくなっています。もっと言えば、そこからは活躍するのは程遠く、プロになるということすら、今では難しくなっています。
日本とオーストラリアでは研修生に対しての考え方が大きく違います。

オーストラリアの超有望な選手は、アメリカの大学に入り、そのままプロに転向するというのが、エリートコースでしょう。彼らに対して協会や周りから、さまざまな情報が提供されます。今、PGAツアーで活躍している選手の多くはこのパターンです。
しかし、研修生上がりのプロも活躍しています。こちらではトレーニーシップと呼びますが、ゴルフ場で働きながらプロを目指す形です。
どうして、日本では研修生からプロになることが難しくなったのかといえば、答えは明白です。どこのゴルフ場も安く雇えるという理由だけで研修生を取りますが、雑用やキャディーなど仕事が忙しいため、練習する時間やラウンドする時間が充分に、与えられないということです。
また、その中で頑張ったものがプロテストに合格したり、QTで試合に出られるようになると、待遇を直さなくてはならないし、今までのように雑用係りというわけには行かなくなるので、その時点でゴルフ場にとって、彼らは邪魔な存在になってしまいます。他の人より頑張って、さて、これからという時に、放り出されてしまうのですから酷いものです。

オーストラリアのゴルフ場では、3年間、ゴルフ場で働きながらプロになるための研修をうけるのがトレーニーシップです。
こちらに来てから最近まで、私はこの制度に疑問を持っており、どちらかといえば無駄だとさえ思っていました。何故なら、プロに転向してツアーで戦うことを考えているなら、幸いにもゴルフをしたり練習には、ここではお金が掛かりませんから、フルタイムで働くより、パートで働いて、その分、ゴルフ漬けの生活をした方が、ゴルフが上手くなると思うからです。その上3年間、トレーニーが終わらなくては、国内のQTも受けられないという制約があるので、その時間を考えると、どうしても?と考えていました。

ところが最近になって、この制度は良いものだと思い直しています。
確かにゴルフに集中するという点では、トレーニーより明らかに個人でやっていた方が良いと思いますし、QTにもすぐに挑戦できます。しかし、ゴルフ場にいれば、トレーニーはどこのゴルフ場に行っても、ただで出来るし、練習時間、ラウンドもやる気になれば幾らでも作れます。
休みの日は当然のこと、仕事の前後にもメンバーに交じってコンペに参加することも出来ます。
トレーニーの試合も月に何度かあるし、そこで実績を作れば、あちこちのゴルフ場で開催されているプロアマにも出られます。
それでも、伸び盛りの時期に3年間制約を受けるという点では???という気持ちはありますが・・・・

しかし、どうしてそう思うようになったのかという最大の原因を問われれば、3年間という徒弟制度が、彼らを大きく成長させるということが分かったからです。
プロを目指すことは簡単です。しかし、トーナメントで活躍する選手は一握りだけですから、大半の人は挫折する訳で、それからは長い別の道を進むことになります。
トレーニーを3年間やって卒業した人は、プロとして認定されます。ゴルフ場に残るもよし、トーナメントを目指すもよし、プロショップに就職しても構いません。また転職して違う仕事につくことも可能です。
トレーニーの間は色々な仕事をしていきます。練習場のボール拾いから始まって、クラブの修理を学びます。スタートの係りをし、メンバーの接客、プロショップの精算業務、ゴルフ場で行うほとんど全ての業務を3年間で学びます。

毎年のように新しい人が入ってきますが、みんなが続くというものではありません。毎月ある試合で一定の成績を収めなければ、トレーニーとしての資格をはく奪されます。
また接客業に向かない人も、自ら去っていきます。色々なことを勉強させられるので、こんなことゴルフに関係ないと、耐えられなくなってやめて行く人もいます。
こうすることで、ゴルフだけでなく、他の仕事についても大丈夫なように訓練されますから、こちらのプロは全員、クラブの修理は勿論、簡単なバギーの修理、取り扱っている商品の説明、使用方法等、誰に聞いても答えられるし、どのプロ達も、にこやかに接客します。

私も5年半オーストラリアにいますが、近ごろゴルフ場に行くと、あちこちのゴルフ場で以前、見かけた、ゴルフをしたというトレーニーに会います。
何年か前にはジュニア、つまり私からすれば子供ですから、ゴルフは上手いけど、はにかんでいるのか、きちんと挨拶が出来なかったり、スコアが悪ければ、ふて腐るような子供たちもいましたが、トレーニーになることでみんな見違えるほど成長しています。
先日、久しぶりに行ったサンドハーストで、ロングアイランドでクラチャンになった子が、働いていました。
当時は16,7歳だったと思いますが、1度きりだし、彼の友達が一緒だっこともあり、2人だけで話していて、ほとんど話もしなかったので、彼の名前すら分かりませんが、私の印象としては???の子どもというイメージでした。
顔も大人びていたし、どこかで見たなぁ。この程度でしたが、私を見るなり、メルウェイさんですよね。僕を覚えていますか?・・・にこやかな顔で言葉を次々に繰り出す彼が、あの時と同じ人物だとは思えないほど、立派になっています。

日本のゴルフ環境とは大きく違うので、トレーニーになることが、ゴルフ上達にもっとも効果があるとは言えませんが、少なくとも、練習する、ラウンドするという機会は幾らでも用意されているし、卒業してからも練習やラウンドをしたければ、何時でも受け入れてくれます。ゴルフ場側もメンバーたちも、有名選手が出ることを誇りに思う気質があるので、どのゴルフ場も彼らを温かく見守っていきます。


オーストラリアでは創立100年、110年といったゴルフ場が軒並みですから、国は新しくとも、ゴルフに関して言えば、日本やアメリカをもしのいでいるというプライドもあるのでしょう。その中で、長年に渡って構築されて来たプログラムは、ジュニアからシニアまで幅広くカバーされていますが、私が感じるもっとも重要な点として、ゴルフ場と協会が一体となって、ゴルフの振興とレベルアップ、将来の展望といった点まで見据えて、考えられ、運営されているところだと思います。

福祉の世界では、ゆりかごから墓場までという言葉もありますが、将来を担う、4,5歳の子供たちを毎週末ゴルフ場に集めて、プロやボランティアの人たちが熱心に指導しているのは、将来のメンバーになりうる人材を育てるだけでなく、ゴルフファーを絶やさない、減らさないという取り組みでもあります。プロ達に一定の地位を与える。責任を持たせるという点では、それを見る子供達、ジュニアにもプロになれたらという夢を与えるだけでなく、プロに対する尊敬の念を持つことにもなります。
我々シニアは55歳から59歳、60歳から65歳、65歳から70歳、70歳以上と別々に表彰があり、上手い人達だけでなく、それぞれの世代、それぞれの実力に合わせた楽しみ方が出来るようになっているのですから、まさにゴルフの世界での、ゆりかごから墓場までが実践されていると言えます。

先に述べたように、実戦という点で試合数等を書きましたが、KGAでもHC3以下を対象に月例がありました。
毎月、名門コースで開催され、年間ポイントの上位者には関東アマのシード、私の頃は日本アマ、関東オープンなどにも出場機会が与えられていました。この取り組みはとても良いことだ思います。レベルアップにも大きく貢献しますし、良い交流の場でもあるからです。ただ残念なのは、実際の試合では4日間の試合なのに、月例は1日だけの試合ということでしょうか?1日の試合と3日間、4日間の試合では戦い方が全く違いますし、結果も全く違ってくるものです。
またジュニアからシニアまでそれぞれのカテゴリーで行われている試合数に、日本とオーストラリアでは相当の開きがありますから、その点でも大きく変わります。
オーストラリアだけが吐出しているのではないか?そんな疑問もあったので、私にも関心のあるアメリカのシニア事情を調べたところ、やはりアメリカでも州、全米で数多くの試合があり、オーストラリア同様に細かくランキングがされています。
こういった点をみると、日本の選手たちの環境は決して良くはありません。


ACTシニアを終えた週末、ナショナルチームのメンバー6人は香港に向かいました。オーストラリア代表として、アジアパシフィックシニアに出るためです。
昨年はニュージーランドが優勝していますが、オーストラリアとニュージーランドは国こそ違えども、すぐ隣どうしということもあり、ライバル関係にありますが、他のスポーツ同様にゴルフでも常に交流がありますから、オーストラリアのランキングイベントに参加しているキュゥイ(ニュージーランドの人をさす略称)もたくさんいます。
個人戦と団体戦があり、団体戦は各国の上位4人の合計スコアで行います。

今年から日本が参加するということで、一昨年に次いで優勝を狙っているオーストラリアとしては、ニュージーランドは勿論、日本チームも強敵だと報じていました。
初日から飛び出したオーストラリアチームが優勝して、2位はニュージーランド3打差、日本は3位でしたが、日本とオーストラリアの差は24打差でした。ポールから連絡があり、初日、二日目と個人戦はリーダーにゴードン、他の選手もトップ5に5人が入っていたそうです。団体戦と圧倒的にリードしたこともあり、2日目の夜の宴会で呑みすぎたのか?最終日は、みんな良くなかったそうです。
個人戦はキュゥイのアンドリューと日本の松本選手がプレーオフで6ホールを戦い、松本選手が優勝です。おめでとうございます。


オーストラリア勢は最終日にそれぞれ順位を落とすも3位にゴードン、4位タイにポール。8位にビンセント、10位タイにデニスが入りました。
日本勢は亀井選手が9位になっています。他の選手は知りませんが、亀井さんは私より確か2つ年長で栃木県で練習場をしてました。KGAの月例で一緒になったのがきっかけで、それから何度かゴルフをしたり、連絡先の交換等もありましたが、すぐに私の仕事が忙しくなったこともあり、試合に出なくなってしまい、それ以降疎遠になってしまいましたが・・・
亀井さんは若い頃から有名な選手でしたから、実績も実力も私には遠く及びませんでしたが、今年も関東シニアで優勝していました。来年は私も参加して戦ってみたいものです。


その為には、オーストラリア代表にならなくてはなりません。ランキングイベントに出るようになって5試合を終えましたが、ナショナルチームの顔ぶれ、実力もある程度分かりました。初めて会って、これは太刀打ちできないと思ったキム・オルセン。彼はその年からシニアツアーで賞金王になり、全英、全米シニアにも出たような一流選手でしたから特別でしたが、今まで私が一緒にやったシニアのプロ達と比較しても、ステファン、ポール、ゴードンは転向しても、そこそこに戦えると思います。
私から見て、その他にも良い選手だと思えるのが6,7人はいますし、実際に試合に出てみて分かったことは、周りから言われて、すっかり私もその気になっていたのですが、トップ5に入ることは、そう簡単ではなさそうだということです。しかし目標であるランキングNO1になる為には、全ての人に勝たなくてはなりませんから、ナショナルチームに選ばれる成績を収められるのか?そんなことを心配しているようでは、話になりません。・・・その位の気構えで居なくてはダメですね!気持ちは強く持たなくては・・・