(特別版) 『第9回 多摩シニアオープンダイワカップ』観戦記

ご無沙汰しております。渡若造です。若いつもりの若造も5月に遂に古希、即ち満70歳が過ぎました。昨年来、すっかり卓球三昧の生活になり、ゴルフの練習もラウンドも減りました。たまにラウンドすると飛ばず、ボールが上がらず、ショートパットが入らない状態です。所属倶楽部ではハンディ12と13に掲示されていますが、スコアは90を切るのがやっとで、実力ハンディは16くらいでしょう。これでは益々意欲減退となり、悪循環に入っています。そんな私が急にシニアとは言え、プロ競技を観戦する気になりました。入会している倶楽部で多摩シニアオープンのポスターを見かけたからです。入場無料なのと村上隆プロ等かつての著名なプロが大挙出場する旨載っていました。村上隆さんは私の住んでいる建物に8年程前に転居し、しばしば顔を合わせ、声をかけるだけでなく、奥さんとは卓球友達で親しいのです。

11月4日、私は東京都の青梅市にある青梅ゴルフ倶楽部へ早朝5時40分に出発し、7時20分到着。駐車場は選手や関係者で満杯のため、従業員用の狭い駐車場に入れられた。早速、車中でパンと牛乳を流し込む。本戦スタート表を見ると、杉本英世・安田春雄・青木基正・草壁政治・中山徹・鷹巣南雄・石井富士夫・小林富士夫・矢部昭・牧野裕・海老原清治・新井規矩雄・村上隆・河野光隆・稲垣太成・田中文雄など懐かしい名前が勢揃い。7時40分から約2時間、スタートホールのティショットを見る。

プロ2名と予選を通ったアマ2名のペアリングである。最初に驚いたのは、身近に見る選手は、プロは勿論アマも身体が大きいのである。目の前で見るので自分との比較ができる。ビッグ・スギこと杉本英世は特にデカイ。ゴルフはまず飛ばすことが重要である。身体が小さければどんなに上手く打っても知れている。米国ツアーで日本人選手が苦戦するのは飛距離の差が一番と言われている。スタートホールは打ち下ろしの長いミドルホール。真ん中に大きな樹木がありスタイミーな設計となっている。プロは飛ばすので、その樹木の左側を狙う。アマは右側を狙う。最初からプロとアマの差を見せつけられた。アマはプロに引けを取らないナイスショットを連発する。身体が大きくなく、体裁のよくないオジサンでもさすがに「日本ミッドシニアアマ優勝」との紹介通り素晴らしいドライバーショットだった。アマといっても各地の有名人の筈だ。

シニアと言っても50歳以上だから、50歳過ぎの選手もいれば70歳を過ぎた選手もいる。私は高齢のプロがどれ位飛ばすのか興味があった。スタートホールで全選手を、その後は有名プロを観察した。1番ホールは打ち下ろしを差し引いて推定し、他のホールは水平と見た。概要は、プロは240y〜260y、アマは230y〜240yだった。70歳を過ぎているであろう杉本や70歳近い安田は250yも飛ばすのでギャラリーは拍手喝采。レギュラーツアー出場の海老原は270yも飛ばす。さすがにトーナメントプロは違うとたまげる。

自分とは余りの違いに感嘆するばかりだが、気付いたことを述べてみます。
プロもアマもショットの前に素振りをしない。スタンスを決めればサッと打つ。例外は安田春雄くらい。我々ヘボゴルファーは時間をかけ過ぎるようだ。
他人がパッティングするときの待機場所は勉強になった。絶対にカップの向かい側に立たない。プレーヤサイドの後ろか前方である。
プロは必ずグリーン上のボール跡を直している。アマも従っていた。トッププレーヤーだけでなく、一般アマも励行すべきだ。近頃のセルフゴルフ場は酷すぎる。
180yあるショートホールをアマでも難なくワン・オンさせる。さすがだ。よく観察すると全員ピンと反対側、即ちグリーンの広い方へ乗せているのだ。それだけ狙った箇所へ打てる技量がある。ウーン。
ドライバーショットの飛距離20〜30yの差は大きい。プロは2打を簡単に乗せる。アマは苦しんで乗せるので当然カップには遠い。私のゴルフと同じである。飛ばせない悲哀はこのレベルでも同じだった。クラブセッティングは、プロはウッド2〜3本に対し、アマは3〜4本の違いがあり、飛距離の違いからくるのだろう。
ドライバーからパッティングまで腰が流れない。どっしりしている。スエー打法で一流だったのは大昔の樋口久子だけである。
当日の青梅ゴルフのグリーンはローラーで固め、高速グリーンになっていた。各ホールのグリーンを近くから見ると傾斜やうねりがある。アマは苦しんで3パット連発。プロは2パットで納める。ダブルボギーのピンチをボギーで止める。1〜3メートルならプロは殆ど入れてしまう。すべてにプロが優れているが、最もアマとの違いがあるのはパッティングだろう。海老原清二は珍しくコツンと打つ。あの高速グリーンをコツンと打つのは勇気がいる筈だが、それを入れてしまうのだから大したものだ。
プロはカップをオーバーさせ、微妙な返しを入れる。アマは距離合わせするから度々ショートする。これは男子プロと女子プロの関係と同じである。

人気選手は、杉本・安田・牧野・海老原プロだった。数百人しかいないギャラリーは殆どこの組に付いて回る。シニアプロでお喋りするのは、安田・杉本・牧野・中山・鷹巣くらいで他は話さない。プロ同士でもまったく会話がない。親しくないからだろう。ましてやアマは無言である。昔は優勝争いを離脱してしまえば、杉原輝雄・尾崎将司・青木功・中嶋常幸などの人気選手は面白い会話をしていたのだが・・・選手が小粒になったのか、真剣すぎるのか、キャラクターのせいか?
私が付いたのは村上隆だ。彼は腰痛で駄目と聞いていたのに、力一杯振る。パワフルだ。飛距離は65歳にして260y行く。ショットは再々乱れるが、寄せやパッティングで妙技を見せた。さすがに元賞金王だ。村上の組に付いて回るギャラリーは私だけ。村上には黙っていたが、同じ組の選手には声をかけた。

「プロとプレーしてビビリませんか」「緊張しますね。プロのパッティングに見とれています」「素晴らしいウッドショットですね。芯を食っていますね」「有難うございます」「どこの所属ですか」「東京国際です」「クラブチャンピオンですか」「はい。経験者です」「上原さんは今でも北海道ですか」「あれはコージさんです」「人違いで失礼しました。あなたは地元ですか」「いえ、新潟です」。こんな会話でした。彼は上原泰典プロだった。18ホール回ってスコアは村上プロ・上原プロ79、アマは82と84だった。

プロは無名プロも有名プロも全然威張ることなく、言葉使いは丁寧で、同伴のアマ選手にも気遣いをしていたので、見ていて好感を抱いた。これぞプロフェッショナル。

この原稿を書くに当たって、青梅ゴルフに電話して当日の成績表を取り寄せた。
関心があるかつての有名選手を中心に報告しましょう。
優勝は、68の矢後則和。2位は68で初見充宣。3位は71の海老原清治と矢部昭。以下は、72中山徹・杉山錬局、73大塚敏彦・露木実(ベストアマ)、74菊地勝司、75青山薫・福沢孝秋・牧野祐、76稲垣太成・小林富士夫・中村忠夫、77安田春雄、78新井規矩雄、79上原泰典・村上隆・鷹巣南雄、80青木基正、81長谷川勝治・河野光隆、83杉本英世、84草壁政治、86石井富士夫でした。アマのトップは7位タイ、2位は77で総合27位でした。スコアもプロとアマの差は歴然でした。

私の今秋の卓球競技大会出場は6回で終了した。シニアゴルフトーナメントで刺激を受けたので、もう一度ゴルフに情熱を燃やす気持ちになってきました。最近は一人でコースに行くと大抵4人中の最年長である。同伴者から「渡さんは年齢の割にお元気ですね。我々の目標になります。よく飛ぶし安定していますね」とのお世辞を聞くようになりました。本当は飛んでいないのですが、若い人達はショットが安定していないから平均すれば私が一番飛んでいる? このお世辞、嬉しいのですが、こんな言葉を喜んでいるようでは年寄りになった証拠です。年配者が仲間以外とはコースに行きたくない心境が理解できます。渡若造(今となっては渡老造)75歳までは単独でコースに出かけるぞ!卓球も75歳以上の部の競技に出場するのが目標になりました。

素晴らしいグリーンと芝付きのよい青梅ゴルフ倶楽部の会員権相場が50万円弱とは、日本経済が完全なデフレ状態に陥っていることを物語っている。 早く経済が立ち直り、ゴルフ業界、加賀屋ゴルフに陽が当たる日を待っています。

<完>


平成21年11月9日 渡 若造