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第37巻 羊を巡る冒険(上) 村上春樹著 講談社文庫刊

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新聞で偶然彼女の死を知った友人が電話で僕にそれを教えてくれた。
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ノーベル文学賞の呼び声高い村上春樹氏の代表作、「羊を巡る冒険」の書き出しです。主人公の「僕」は、大学生の時に、つきあった彼女の葬式に行き、現在の妻と離婚し、新しいガールフレンドと「性交」します。そして、「鼠」というあだ名の昔の友人から送られてきた「羊」の写真から事件に巻き込まれ、「鼠」と「羊」を探すために北海道に旅立ち、そこで、さらに不思議に巻き込まれる。というストーリーです。

ご存知ですか?あたりまえ?現代日本文学の名作?それがなぜ、「ゴルフの本棚」なのか?ですか?説明しましょう。


羊を巡る冒険

「羊を巡る冒険」は、1982年8月に発表された小説で、作中の舞台は1978年の夏から秋、冬になる直前が描かれています。ですから、驚くべきことに、携帯もメールも文中には出て来ません。さらに、当時は「後天性免疫不全症候群=エイズ、HIV」も世の中には、知られておらず、(エイズとしての最初の症例は、1981年にロサンゼルスのゲイの男性とされる)主人公の「僕」は、やたら女性と「性交」します。(村上春樹は、作中で、「性交ということばが僕はとても好きだ。それはなにかしら限定された形の可能性を連想させてくれる。」と書いています。「寝る」「セックスする」も出てきますが、ここでは僕(村上春樹)に敬意を表して「性交」に統一しています。)当時は、とにかく出会ってすぐに「性交」することが、かっこいい。とされていた時代なのです。やたらと煙草を吸って、缶ビールを飲んで、空き缶を海だった埋立地に向かって投げ捨てて、出会った女の子と「性交」するのが、かっこいい。とされていた時代です。バブルの直前で、世の中は右肩上がりで、500円がお札から硬貨になり、「笑っていいとも!」がはじまり、グレース・ケリーが自動車事故死したのが1982年です。当時、大学生だった私は、どうして主人公の「僕」のように出会った女性と片っ端から「性交」できないのか?が最大の悩みだった時代です。え?そんな時代背景の説明はいらない?お前の大学時代の妄想はもっといらない?それより、なんで、「羊を巡る冒険」が、「ゴルフの本棚」に関係あるんだ?昔、読んだけど、ゴルフなんかストーリーに出てこない?おおかた、まこっちゃんの「スイングを巡る冒険」と「羊を巡る冒険」が、「○○を巡る冒険」というところが同じというこじつけだろう?

何をおっしゃっているやら。(笑)

確かに当初、僕(まこっちゃん)も、「スイングを巡る冒険」が、予想以上に長くなってしまい、「羊を巡る冒険」を持ってきて、とりあえず、「スイングを巡る冒険」に区切りをつけようと考えて、30年ぶりに「羊を巡る冒険」を買い直し(我が家の本棚を1時間掛けて探したが、「1970年のピンボール」や「1Q84」はあるのに、「羊を巡る冒険」はなぜか無かった)、最初から読み直してみました。すると、そこに、以前読んだ時には気づかなかった「ゴルフ」が隠されていることに気がつきました。しかも、それだけでなく、いつのまにか、僕(まこっちゃん)自身が、隠された冒険の旅に巻き込まれてしまう秘密があったのです。

第一章 奇妙な男のこと

冬も終わりに近づいたその三月の昼下がり、僕(まこっちゃん)は仕事中なのに、頭の中は仕事を休んで、別れた妻のスリップについて考えていた。隣の席の女性社員に「ねぇ、君はスリップを着ないのかい?」と尋ねそうになったときに、電話がなった。 「電話、鳴ってますよ。」

おかげで、女性社員からセクハラで訴えられるリスクを回避できたことに感謝しつつ電話にでようとすると、「きっと、ゴルフのことよ。」と彼女は言った。「そして、冒険が始まるの」

なんのことかわからず、彼女に尋ねようとしたが、既に彼女は自らの仕事に戻っていた。

僕(まこっちゃん)は四回ベルを鳴らしておいてから受話器を取った。
「あ、まこっちゃん?!今、大丈夫?今週末のね。Nの加賀屋懇親会、ひとりね、空きがでたからね。来ないかなぁ?来てくれないかなぁ?」
「社長、すみません。今週末も沖縄に出張なんですよ。行きたかったなぁ。残念。皆様によろしくお伝えください。」

とにかく、そのようにしてスイングを巡る冒険が始まった。

第二章 ビーチサイドホテルの冒険

ビーチサイド

ビーチサイドホテルは無個性だった。本当は、いるかホテルに泊まりたかったのだけれど、那覇には「いるかホテル」なんていう名前のホテルは無かったのだからしかたない。しかし、「ビーチサイド」は「いるか」に通じているし、なんとなく、僕(まこっちゃん)が泊まるホテルは、ここ以外にないような気がした。

部屋に入って、僕(まこっちゃん)が最初にやらねばならなかったのは、エア・コンディショナーのスイッチを入れることで、なにしろ3月だというのに、気温は26度もあり、東京から着てきたワイシャツが汗でしっとりと濡れつつあったからだ。

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「やれやれ」と僕(まこっちゃん)は言った。やれやれという言葉はだんだん僕(まこっちゃん)の口ぐせのようになりつつある。「これで出張の三分の一が終わり、しかも我々はどこにも辿りついていない。」

僕(まこっちゃん)は夕食のあとでビーチサイドホテルのロビーにある品の良い青色のソファーの上で休んでいた。

ビーチサイド ビーチサイド

「お仕事の方はいかがですか?」とフロント係は鉢植えに水をやりながらおそるおそる訊ねた。
「あまりぱっとしないね」と僕(まこっちゃん)は言った。
「それなら打ちっぱなしはいかがですか?」
「打ちっぱなし?」
「そうです。ゴルフの打ちっぱなしです。当ホテルの横の秘密の通路を抜けますと練習場に出まして、そこでゴルフの練習ができます。」
「ふうん」と僕(まこっちゃん)は言った。
「しかも、ご宿泊者は、100球まで無料。早朝は5時から9時までは、100球500円です。練習場は200ヤードございまして、ドライバーのスイングにはもってこいです。」
「スイング」と僕(まこっちゃん)は言った。



(下巻に続く)