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世界ゴルフ見聞録 大塚和徳著 日本経済新聞社刊

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やっと、漫遊記も最終回にたどり着きました。長かったなぁ。帰って来てから、もう2カ月くらい経っているんだもの。皆さまも、よく我慢してお付き合いいただきました。ありがとうございます。前田社長に至っては、その間、入院までする始末。でも、わざわざメールで、「病院のベッドで読む『ゴルフの本棚』は一味違います。」と送ってきました。一味良かったのか、悪かったのか?もし、良かったのなら、皆様も是非一度入院して、『ゴルフの本棚』を読まれることをお勧めします。

世界ゴルフ見聞録 大塚和徳著 日本経済新聞社刊

さて、スコットランドでのゴルフ漫遊の旅も終りを告げ、一路アイルランドへ。なぜアイルランドへ行くか?といいますと、マイレージで取った帰りの航空券が、ロンドン発ではなく、ミュンヘン発だったせいです。エジンバラ⇒ミュンヘンの直行便は、1便しかなく、しかも午前発の昼過ぎ着。ミュンヘン発の成田行きは、夜2100発。乗り継ぎの間が空きすぎるし、朝ゴルフをやる時間も無い。これがダブリン⇒ミュンヘンの便は、夕方発でミュンヘン着が2000時。乗り継ぎもスムースだし、ダブリンで午前中のんびりとゴルフをやった後、帰れる。エジンバラ⇒ダブリンは、夜のうちに1時間ちょっとのフライトで移動できるので、時間を有効に使えて、結果的にゴルフの回数を増やすことができる。というわけです。しかも、ダブリンは、空港から近くに名リンクスがいくつもある。その中に、ポートマノックホテル&ゴルフリンクスというリンクス併設のホテルがあります。日本で言うならば川奈みたいなもんでしょうか?しかも空港から20分。経営は、アイリッシュウィスキーで有名なジェイムスン(Jameson)。これは、いかねばなるまい。

ダブリンに到着し、ホテルからの迎えの車に乗り込みます。運転手はピーターという名前のがっしりしたアイリッシュです。ピーターが、早速、私のキャディバッグを見て、「ゴルフするのか?」と聞いてきます。「もちろん」「明日か?」「もちろん」「それは、大問題だ。」「?」ときょとんとする私に、i-phoneの天気予報を見せてきます。「何々?サンダーストーム?雨水が怖くて、水泳部ができるか。え?ウィンド?風が怖くて扇風機にあたれるか。何々、風速29m?何それ。1秒間に29m?ふーん。何か問題でもある?何?ハリケーン?馬鹿言っちゃいけないよ。こちとら、台風の本場の日本から来てんだよ。アイルランドの風が怖くて、ゴルフやらなかったなんて、末代までの恥だよ。」

なぜか、私のゴルフをやめさせようとするピーターに「大丈夫。俺がゴルフやる時は、雨も降らないし、風も吹かない。」と言い切ると、ピータ―は目を丸くし、首を振りながら「クレイジー。。。」と呟きました。

小洒落たホテルで、ギネスビールとジェイムスンをしこたま飲み、朝、起きますと、外はかなりの雨風です。でも、まぁ台風ってほどじゃないな。と言いながら、ホテルの朝食を取り、一路ポートマノックゴルフクラブへ。ホテルの敷地(ゴルフ場)と隣接しており、タクシーで僅か5分ほどで到着です。

Portmarnock 1tee

ポートマノックゴルフクラブは1894年開場。1949年に全英アマの会場となりますが、大会前にアイルランドは、イギリス連邦から独立。結果的に、全英アマがイギリス以外で行われた唯一の大会となりました。ダブリンでは、「オールドコース」というと、セントアンドリュースではなく、この「ポートマノックゴルフクラブ」のことを指します。もっとも、隣にあるホテルのコースも「ポートマノックホテル&ゴルフリンクス」という名前だから、紛らわしさを避けるためではありますが。

どことなく、ロイヤルアバディーンに似たクラブハウスとプロショップで、チェックインをしますと、数人のゴルファーが身支度をしています。雨風も、まぁまぁ強いですが、ゴルフができないほどではありません。

前の組が2サムなので、「ひとりだから、ジョインしてもいいか?」と聞くと、「ごめん。僕らは、今日、クラブ競技なので、他のゴルファーと一緒に回れないんだ。」と済まなそうな顔をされました。「ひとりなら、先に出るか?」と聞かれましたが、「初めてだし、コースがわからないから、君たちの後ろを打っていくよ。」と言って、ひとりで彼らの後ろを回ります。

スタートホールは、右に海。左は茫々のラフです。風は左から右に吹いています。フェアウェイ左サイドにドライバーを打つと、会心のショットの筈が、ボールは嘘のように右に流されて海に。うーん。厳しい。打ち直しは、はるか左のラフの上を打って、やっとフェアウェイ右サイドに残ります。1番は7。まぁ、しょうがありません。

それでも、風の強ささえわかれば、その分風上に向かって打っていけばいいのだし、2番から4番まではパー・ボギー・パー。前の組が競技だからでしょうか、遅いので、毎ホール少しづつ待ちますが、思考能力が無くなるほどの雨風ではありません。冷静にコースを分析しながら回っている感じ。4番をパーで終わって、5番は、50ヤードほど前に小さな丘があります。ティーマークからは、フェアウェイが全く見えず、いわゆる「アルプス」の作りです。ティーマークの向きと、スコアカードから、ここからこっちへ打っていくんだろう。と推測はできますが、フェアウェイは全く見えません。

危ないので、前の組がどこにいるのか、とことこ歩いて丘の上から見ていると、まだフェアウェイからセカンドを打っています。彼らが打ち終わって、ティーショットを打つとフェアウェイ右サイドに飛んで行った感じ。歩き始めると、後ろのホールで、「●×△#$%&!!」と歓声が、後続組に追いつかれたな。たぶんバーディでも獲ったかな?と思いながら、セカンド地点に行くと、前の組はグリーン周りで苦戦中でセカンドが打てません。その時、ドスン!という音とともに、15ヤードほど左のフェアウェイにボールが飛んで来ました。後ろの組は、アルプスホールで、前の確認もせずにドライバーで打ってきたのです!一瞬にして、モレ―GCでの悪夢が甦ります。「打つな―!」と叫んで、クラブを頭上で振るも、雨風が強くて、とても聞こえません。しかたなく右ラフに避けて、「打つな―!」と叫んでいると、耳元を「ヒュッ!」という音とともに、白いボールがかすめました。

縮みあがる。とは、このことです。ちょうど、前の組のグリーンが終わったので、急いでセカンドを打ち、グリーンに向けて一目散に駈け出しました。2サムならいいのですが、3人目、4人目がいれば、いつ打ってくるかわかりません。途中、右足に白い石だか、ボールだか、わからないものが当たって、ハリエニシダの茂みに転がりこんだような気がしますが、確認する余裕はありません。安全なグリーンまで駆け上がり、後ろを振り返ると、後続組が、丘の横のカート道から出てくるところでした。パットを終わり、振りかえると2人組がなにやら右ラフでボール探しをしている模様。そうすると、さては、あれは、ボールだったかな?

その後は、特になんの問題も無く、ずぶ濡れになりながら、18ホールをホールアウト、クラブハウスで着替え、熱いシャワーを浴びます。ロッカーで顔を合わせるゴルファーは、全員頭からパンツまでびしょびしょです。顔を合わせると、なぜだか全員大笑い。ともに戦った戦友。という感じです。多分、後続組だったと思われる2人組に、5番ホールの話をして、ごめんね。と謝ると、2人は、顔を見合わせて大爆笑。アメリカから来たゴルファーだったらしい。自分たちこそ、打ち込んで悪かった。初めてのコースなので、よくわからなかった。怖かっただろう。と謝られました。お洒落なバーラウンジで、旨いギネスとサンドイッチの昼食。ポートマノックは、ヨーロッパ以外の海外から来たゴルファーには、10EUR分の昼食をサービスしてくれます。

The Island

午後からは、ホテルの反対側で、湾をぐるりと回り込んだ半島の先端にある「ジ・アイランド(The island)」でのプレーです。アイランドも1890年創立。

ゴルフ場に着いて、ロッカーでスタートの準備をしていると、このクラブのキャプテンに紹介されました。「光栄です。」と挨拶すると、「まさか、今からプレーするつもりか?」と聞いてきます。「午前中もポートマノックでプレーしたし、絶好のゴルフ日和ですね。」と答えると、しばらくポカンとした表情の後、大爆笑。肩をバシバシ叩かれて、「勇敢な日本人だな!グッドラック!」と言われました。

スタートティーで、クラブプロがコースの説明をしてくれます。どうやら、前後には誰もラウンドしていない模様。道に迷うか?と聞いたら、「コースガイドを見ろ。ただし、この雨風の中で、コースガイドが見れたらね。」と笑います。

確かに午前中より雨風が強まっている感じ。1番ホールは、風が真正面から吹いています。ドライバーで打つと、左右に曲がらず、後ろに戻ってきて、100ヤードしか飛びませんでした。低い弾道で、風の下を転がしていくしかありません。Par4なのに、6オンがやっと。グリーン上でも、風でボールが転がるので、難しく4パット。これは、大変です。ちなみに風速29mというのはどういう体感かといいますと、「ビューフォード風力階級表」というものがあり風力階級が0〜12の13段階に分かれています。その上から2つめ。一番上は「颱風」で32.8m以上。11番目が「暴風」で、28.5〜32.7m「めったに起こらない広い範囲の破壊を伴う。」そうです。その下の「全強風」が24.5〜28.4m「陸地の内部ではめずらしい。樹木が根こそぎになる。人家に大損害がおこる。」なんだそうです。リンクスだから、樹木なんか無いし。人家も無いし。スコアは大損害だけど、それは風が吹かなくても一緒だし。関係ないね。もちろん、傘なんかさせません。どのみち、スイングする時、傘は差していられないし、横から降ってくるから、傘は役に立たないし。傘なんて差せなくても関係ないね。しかし、雨が真横から降ると、困ったことがひとつ。雨が耳の穴を直撃して痛いのです。下手をすれば、鼓膜が破れるかもしれません。それで、風上側の耳は手で覆って歩きます。「古い奴だとお思いでしょうが、、、」鶴田浩二か。

8番ホールまで、パーが1つもとれません。何より、ボールが飛ばない。風に負けるし、寒くて体が硬くなっているのか。それにしてもアプローチが全部ショートなのはおかしい。5番で、気が付きました。たぶん、距離表示がグリーンエッジまでなのだ。残り150yで150打つと、手前までしかいかない。と言うことは、エッジから15〜20yプラスすれば、グリーンオンするだろう。9番Par3、153yで試すと、どんぴしゃり。初パーです。さて、バックナインだ。人間て、恐ろしいものです。雨風に慣れてきました。もっとも、スコアカードをつけるどころか、コースガイドすら取り出せる状況ではありません。その時、あ!っと気が付きました。距離表示がメートルなのです。153yだと思っていた9番Par3は、153m=168yだったわけです。そういえば、スタート前のお兄ちゃんが、「メートル表示だから気をつけて」と言っていたかも、、、9番Par3は、153m=168y。153+20で170y打ったんだから、ドンピシャです。

わかったからといって、この暴風の中でスコアはまとまらず、もっとも、スコアがまとまっても、スコアをつけることすらできなかったでしょう。18ホール終わって、「這う這うの体」とはこのことだ。という姿でクラブハウスに引き上げてきますと、なんと!クラブハウスに鍵がかかっている。しかも、人の気配がありません。荷物はロッカールームに置いたままですし、ホテルからの迎えの車が来るまで1時間以上あります。遭難か?場合によっては、もうハーフ行っちゃおうか?いやいや、さすがにもう無理。と思いながら、ぐるりとクラブハウスを1周しますと、車が1台止まっていますし、一部には人がいる気配もあります。しかしながら、どのドアも鍵が掛っていて入れません。手当たり次第、ドアを開けようと試していると、1か所だけ、「メンバーのみ。汚いゴルフシューズで入らないこと」と書いてあるサンルームのドアだけが開いていました。ドロドロの汚いシューズで、毛足の長い絨毯がひかれた部屋に入り、メンバー専用ルームを通って、ロッカーに。シャワーを浴びて着替え、やっと一心地つきました。バーラウンジに人がいるはずもなく、迎えの車が来るまで、メンバー専用のサンルームで、悠々とひとり座って待ちました。

ホテルからの迎えはピータ―でした。「生きてたか?!」顔を見るなり大爆笑です。

ホテルでギネスとジェイムスンたっぷりの夕食を摂り、酒でフラフラなのか、それとも疲れでフラフラなのか?よくわかりませんが、朝まで熟睡です。

最終日は、ホテルに付属のコースでラウンドしてからフライトです。今日も、暴風雨警報が出ています。朝飯を食べた後、ホテル内のプロショップに行くと、ひとしきり「この天気でやるのか?」話です。昨日から「完璧なゴルフ日和だよね」で通します。誰もいないコースで、のびのびラウンドです。スタートする頃には、時折、雨がぱらつくものの、昨日に比べれば、穏やかな天気です。「ほらみろ、俺がゴルフやる時は雨降らないんだ。」と再び、天狗になります。ベルンハルト・ランガ―設計の6422yおっとメートルだから、7064ヤードPar71です。昨日のポートマノックや、アイランドに比べれば、優しいコースです。もっともリンクスはリンクスですから、ラフもバンカーも厄介ですが、それには慣れていますし、最後の総仕上げを優しいコースでやって、良い思い出作ろう。という作戦です。出だしからパーが続き、7番までパープレイです。8番でも、アプローチをピタリと寄せて、これを入れればパーというところで、引っ掛けてボギー。どうも最後に来てパターの調子がおかしい。雨も降っていないし、後続も来る気配もないので、ここで、パターを修正しようと思い立ち、同じラインから10回連続して入れるまで次のホールに行かない。と練習を始めました。5分ばかり練習したでしょうか?なんだか急に周囲が暗くなったな。と思った途端、昨日の暴風雨の再来です。パターの練習どころではなく、慌てて次のホールに行きます。8番まで1オーバーで、「前半30台は堅い」と思っていたのに、9番でトリプル。10番からは、パーどころか、ボギーセーブが必死です。

またしても、風に向かって斜め45度で打たないとコースに戻ってこない。真横から風が吹いてる時は、手で耳を覆わないと雨が耳に入って痛い。カートの置き場は考えておかないと、風で横倒しになる。ピンを抜くとき気をつけないと、濡れたフラッグがバタバタして、顔にあたると無茶苦茶痛い。というゴルフです。苦戦しながら最終ホール、これを入れれば、ハーフ49という1メートルのパットが残りました。入れればトータル89だし、終わりよければすべてよし。と言うパットは、またしても引っ掛け。最後も90を打って終わりました。

今回の旅でラウンドしたコースで、この本「世界ゴルフ見聞録」に出てくるのは、「ロイヤル・ドーノック」「モーレイ」「ロイヤル・アバディーン」「ロイヤル・モントローズ」「カーヌスティ」「セントアンドリュース(オールドコース)」「イーリー・シッスル・クラブ」「マッスルバラ・オールドコース」「ポートマーノック」の9コースです。10日間で14.5ラウンド。ゴルフ漬けでした。現地金曜日のフライトで、成田到着は、土曜の夕方です。

土曜の夕方に成田に到着した翌日曜日。私の所属するNカントリークラブで月例がありました。時差ぼけ解消の為に出場しました。前半39「俺って、ゴルフ上手いなぁ。こんな簡単なゴルフ場でしたっけ?」って感じ。だって、雨も降っていないし、風もないんだもの。もっとも、午後から45叩いて、「やっぱり気のせい」とわかりました。

「リンクスでゴルフすると上手くなるのか?」という疑問は「上手くはならない。だけど、私の場合は、ゴルフが楽しくなる。」というのが答えです。ここのところ、ゴルフがちょっと苦痛になりそうだった自分には、最高の薬でした。「最近ちょっと、ゴルフに行き詰ってる。」ていう方、リンクスにゴルフの魂を探しに行ってみませんか?「俺も、行ってみたい!」と言う方。ゴルフの本棚あてに連絡してみてください。都合が合えば、ご一緒します。ただし、私と一緒の場合は、1日2ラウンド。しかも1ラウンド2時間ちょっとでのラウンドですから、ご覚悟を。あ、それからボールをたくさん用意することをお忘れなく。これにて漫遊記は終了です。永らくお付き合いいただきありがとうございました。