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夢のゴルフコースへ スコットランド編 伊集院静著 宮本卓写真 学習研究社刊

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夢のゴルフコースへ スコットランド編 伊集院静著 宮本卓写真 学習研究社刊

怖い夢を見ました。

「生まれ変わったら伊集院静になりたい。」夏目雅子と結婚して、出版社のお金で、世界中のゴルフコースでゴルフがしたい。と思っていたら、夢の中で、神様があらわれて、「そんなに伊集院静になりたいのなら、特別に呪文を教えてあげよう。なーに、簡単な呪文だ。『伊集院静になりたい。』を正確に100回唱えるんだ。ただ、それだけ。良いかい?100回だからね?」と、言うのです。

喜びましたねぇ。だって、あの夏目雅子と結婚生活が送れるんですよ。出版社のお金で、スコットランドにも、ハワイにもオーガスタにもゴルフに行けるのです。

早速、「伊集院静になりたい。伊集院静になりたい。伊集院静になりたい。。。」と唱えました。すると、むくむくと体が膨れていき、、、あれれ?何か変です。

慌てて鏡を見ると、そこには痩せた無頼派作家ではなく、人の良さそうな、おデブさんが、、、これは、ひょっとすると、伊集院、、、光?

すると神様が得意顔であらわれました。
「どうじゃね?」
「『どうじゃね?』じゃねぇよ!おいらがなりたいのは、『伊集院静』!これは、『伊集院光』!間違えてんじゃねぇよ!」
「おやおや、これは、心外。間違えたのは、そちらなのに。」
「?」
「『伊集院静になりたい。』を正確に100回唱えろ。と申したのに、お主は、1回多く、101回念じてしもうた。なので、同じ伊集院でも、光になった。というわけだ。」
「ん。。。確かに途中で、86回だか87回だか、わからなくなったから、念のために多めに唱えたけど、だからって、なんで伊集院光になるんだよ!」
「これこれ、そう怒るな。これからは、伊集院光として、クイズ番組に精を出せば良かろう。」

「いやだ!いやだ!おいらは、伊集院静になって、出版社が『取材旅行』と称する大名旅行で、世界各地の夢のゴルフコースを回りたいんだ。」

「これこれ、そう怒りなさんな。ゴルフだけがスポーツではない。伊集院光になって、北海道日本ハムファイターズを応援すれば良かろう。」

「いやだ!いやだ!おいらは、伊集院静になって、女にもてて、夏目雅子といちゃいちゃしたいんだ!と、言うより、あ!おまえは、ずいぶん神様にしては馬面だと思っていたが、おまえ、良く見れば、死んだ落語家の圓楽じゃぁないか!」

「これこれ、変なことを言うもんじゃない。圓楽の名跡は、弟子の楽太郎に既に譲っておる。」

「ふざけるな!大体、元はと言えば、伊集院光も、圓楽党にいた三遊亭楽大という元落語家じゃないか!それをおまえが、落語家をやめさせたのに。なんで、その圓楽が、おいらを伊集院光にするんだ!いやだ!いやだ!お願いだよぉ。伊集院静にしておくれよぉ。出版社のお金でスコットランドでゴルフがしたいんだよぉ。夏目雅子といちゃいちゃしてみたいんだよぉ。お願いだよぉ。」

必死ですがる伊集院光の姿をした私の手を、五代目圓楽は、ぷいっと振り払い、

「とっとと、『Qさま!』でも、『雑学王』にでも、出演するがいい!」

突然現れた『Qさま!』と『雑学王』のADに両脇を抱えられ、抗うすべもなく私は、無理矢理クイズ番組の解答席に座らせられます。

「さて、問題です。ポアンカレ予想とは、単連結な3次元閉多様体は3次元球面S3に同相である。という1904年に、フランス人数学者アンリ・ポアンカレにより提出された予想ですが、、、ハイ!伊集院さんが、もうボタンを押した!」

「ボタンなんて、押してないよぉ。だいたい、何、言っているのか、わからないよぉ。ポアンカレ―なんて、カレーは、見たことも食ったこともねぇよ。助けてくれぇぇぇ。」

「残念!ここで、伊集院さんが間違えてしまうとは!全員正解まで、あと一問だったのに!」

クイズ番組の共演者や、テレビの向こうの視聴者の落胆した視線を一身に浴び、いたたまれないこと著しく、

「ごめんよぉ。おいらは伊集院光じゃないんだよぉ。助けてくれぇ。」

と涙ながらに訴えていると、目が覚めました。

汗、びっちょりです。

ね、怖いでしょぉ?

いくら、『漫遊記』に飽きてきたからって、小噺なんて書いていていいのか。今回は、あの「ロイヤル・ドーノック」の巻ではないか?楽しみにしている人も、ひとりかふたりいるかもしれない。いくら伊集院静が妬ましくても、とっとと「ロイヤル・ドーノック」の話をかくべきではないのか。という苦情が寄せられそうです。

Royaldornoch

さあ、いよいよ「ロイヤル・ドーノック」へ挑戦です。(笑)

「ロイヤル・ドーノック」を高く評価する人は多く、19〜21巻でご紹介した山口信吾氏も「誰もが野性的な自然の美しさに感動し、コースへの挑戦に興奮するでしょう。一度プレーするだけで『世界で最も偉大なコースの一つ』だと理解できます。」と書いていますし、敬愛する夏坂健氏の著作にも「ロイヤル・ドーノック」はたびたび登場し、ゴルフ場横の、「ロイヤルゴルフホテル」に滞在し、ホテルから眺めるゴルフ場の美しさに言及し、このホテルでの長期滞在こそ、桃源郷だと書かれています。

インバネスから更に北へ1時間ほどかかる立地条件ゆえに、全英オープンが開催されたことはありません。しかしながら、そのことが、評価を下げることは無く、その秘境ぶりがむしろ「隠された宝石」として、人々の憧れを強める。という結果となっています。今回も、同行の友人に「どのゴルフ場で一番やりたい?」と聞くと「ロイヤル・ノードック!」と答えたので、無理して日程に組み込みました。でも、「ノードック」じゃないからね。それじゃぁ「脳ドック」みたいじゃないの。「ドーノック」だから。(笑)

ドーノックは、インバネス北部に位置する人口1000人余りの小さな町で、1727年にスコットランドで、最後の魔女が火あぶりにされた。という歴史を持つ町です。しかも、魔女が火あぶりにされる100年以上も前、1616年には、この町でゴルフがプレイされていたという記録すら残る町です。こいつら、魔女よりも前からゴルフやってんだもんなぁ。

また、ドーノックは、ゴルフコース設計家「ドナルド・ロス」の生まれ故郷としても有名です。ドナルド・ロスの代表作は、アメリカ東海岸にある「パインハーストNo.2」。たびたび、世界一。と評価されるコースです。ロスの作品と「ロイヤル・ドーノック」の類似性は、よく論じられるらしく、おわん形の砲台グリーンに短く刈り込んだグリーン周り。ウォーターハザードは少なく、うねるフェアウェイやマウンドになったラフ。というところが、ロスとロイヤル・ドーノックの共通点だそうです。

スターターは、タータンチェックのスカートをはいたおじさんです。「今夜(Tonight)ラウンドするのか?」と聞かれました。確かに、16時過ぎのスタートだから、終わると夜ですね。でも、面と向かって「夜」と言われると、ちょっとびっくりするなぁ。

Royaldornoch

友人がキャディを頼むと、キャディマスターが難しい顔をしています。どうしたのか聞いてみると、「今日は連休の最初の土曜の夜だから、キャディが、みんなあがって呑みに行ってしまった。」と言います。それでも、あちこちに電話をしてくれているので待つことしばし。「OK!見つかったよ。」と言われてにっこり。準備して、1番Teeで待っていると、16歳くらいの女の子がやってきました。確かに彼女なら、呑みに行かないだろうけど。デートはなかったのだろうか。「よろしく」と握手するも、照れくさそうにもじもじしています。それでも、Teeグラウンドでは、「1番ホールは、短いPar4。フェアウェイさえキープしておけば、パーは狙えるから、ドライバーを持つ必要はありません。たいてい、みなさんフェアウェイウッドか、ロングアイアンでTeeショットします。」と的確な説明をします。いつものように私は、キャディを雇わず、カートを曳きながら、横でこっそり説明を聞く姑息な作戦です。1番パー、2番Par3でダボを叩くも、3番もパー、4番ダボ、5番パー。6番、7番と連続ロストして、連続7を打ち、8番9番をボギー。OUT48(Par35)は、いつも通り。少女キャディが、はにかんで小さな声で説明するので、風が吹いていると聞こえない。自分のキャディじゃないから、「もっと大きな声で話してくれ」と言うわけにもいかず、ところどころ、わからないところがあったのがロストに直結してしまった。痛い。

それにしても、グリーンが遅い。リンクスのグリーンは、硬く早いのですが、やたら遅く、いくら打っても届かない。観光客が多いから、グリーンを早くすると対応できなくなってしまうのだろうか?INに入って、ボギー、ダボ、ボギー、ボギー、ダボ、パー、ダボ、ボギー、ボギーで46。(Par35)トータル94。20時過ぎに終了。少女キャディは、友人からチップをもらい、にっこりと笑うとそそくさと帰っていき、私たちは、クラブハウスへ。

Royaldornoch

今回は、どのゴルフ場でも、ビジターもクラブハウス内に入ることができました。クラブハウス内でも、「Club room」や「Dining room」と呼ばれる部屋以外はビジターも入ることができました。ビジターは、「Bar」や「Lounge」で飲食が可能であり、そこでは、上着も不要。ただし、ゴルフシューズは普通の靴に履き替える必要があります。早速、ロイヤル・ドーノックの「Bar&Lounge」のソファー席で、いつものように、スープとサラダ、サンドイッチ、フィッシュ&チップス。そして、「エール」と呼ばれる炭酸の弱いビールで夕食。隣のテーブルでは、男10人、女5人あわせて15人くらいの若者集団が、派手に飲んでいます。ゴルファーもいるようですが、全員がゴルファーというわけではなさそうです。小さな町なので、酒が飲めるバーやパブの数が少なく、仲間内で呑みに来るのでしょうか。彼らの中には、Tシャツにジーパンの人間もいました。それでも、クラブが、「町の社交場」としての機能を果たしていることは、悪い感じではありません。それにしても、ロイヤル・ドーノックでもTシャツ、ジーパンかぁ。服装問題は、個人と集団との関係性によって違うから難しい。一方的に決めつけるのは、野暮かもしれません。

ロイヤル・ドーノックは、素晴らしいゴルフ場ではありましたが、期待が強すぎると、感動が薄くなる(札幌時計台効果とも言う)のも事実。「隠された宝石」とわくわくしていたが、行ってみたら、バリバリ観光地。という感じでした。(笑)

一夜明け、日曜日は移動日。インバネスからアバディーンの途中のロッシマスという小さな港町まで移動します。移動ついでにネス湖でネッシーを探し、私にはヨットのマストにしかみえないものを、友人がしきりに「間違いなくネッシーだ。」と主張し、さらには、スコッチの蒸留所が沢山ある「スペイサイド」というエリアで、蒸留所見学。「グレンフィディック」のツアーガイドのパンク姐ちゃんが、「スコッチ飲む時に氷なんか、入れんじゃないよ。氷入れたいなら、コカコーラに入れやがれ。」というセリフにやんやの喝さい。という、超おのぼりさん観光デーを実施。なんだかんだで、ロッシマスに15時過ぎに到着。

Morey Golf Club

ロッシマスには、「モレ―(Morey)GC」(1889年創立オールド・トム・モリス設計6687yPar71)があり、やっぱりラウンドすることにしました。トム・モリスが「ここほどゴルフに適したリンクスは無い」と褒め称えた名リンクスです。各ホールに違った特徴があり、ブラインドホールも少ない良いゴルフ場でした。しかし、残念なことに、ここで大変不愉快な思いをしました。2番で、友人がセカンドショットを打って歩いていると頭の上を越すTeeショットを打ち込まれました。確かに友人が「疲れた。足が痛い。」と、歩くのが遅かったのは事実なのですが、3番のPar3が終わって、4番のTeeで、パスさせました。4人のうち、3人は、「さっき、ごめんな。パスさせてくれるの?ありがとう。」と笑顔で会話していきましたが、打ちこんだ本人である目つきの悪い痩せた白人は、「Sorry」の一言もありません。故意は、明らかです。見ていると、ドライバーが280yくらい飛び、組で一番上手いようでした。結局、その後、怒りに支配されたままの、散々なラウンドで、楽しくありませんでした。折角の素晴らしいゴルフ場だったのに、残念です。まぁ、伊集院静になれないことに比べたら、このくらいの残念さは、平気。平気。チェッ。(第24巻に続く)