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HOME OF GOLF 伊集院静著 宮澤正明写真 講談社文芸VISUAL刊

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そろそろ「まこっちゃんのリンクス漫遊記」も飽きてきましたね。今回は、その4になります。これ、あと幾つ続くかなぁ。予定では、6か7くらいまで続く予定です。もうしばらく我慢してお付き合いくださいな。

HOME OF GOLF 伊集院静著 宮澤正明写真 講談社文芸VISUAL刊

さて、今回の本ですが、本来なら、前回のセントアンドリュース・オールドコースの巻に、この「HOME OF GOLF」を取り上げた方が良かったかもしれません。伊集院静氏が、プレストウィック、セントアンドリュース・オールドコース、カーヌスティ、ターンベリー、最後にキングスバーンズと有名ゴルフ場をラウンドし、宮澤正明氏の写真がふんだんに掲載されています。というより、宮澤正明氏の写真に、伊集院静氏の文章が絵本くらいの分量で載っています。講談社創業100周年記念らしいのですが、30分もあれば読めてしまいますし、値段が4830円。うーん、手が出ないな。まぁ、リンクス漫遊記のためには仕方ないか。(笑)しかし、夜、ひとりでスコッチのシングルモルトウィスキーを片手に、この本を眺める。という時間は、確かに至福のひと時。それなら4830円は安く感じます。

それにしても、伊集院氏の文章の内容と、ここで私が取り上げている内容が酷似していることに驚きです。バンカーで苦戦する話。転がしを多用する話。ほぼ、同じ。まぁ、同じところをラウンドすると感想も似てくるのは仕方ありませんが、ここまで似ているとパクリ疑惑が起きかねません。念のため、言っておきますが、パクッていませんからね。(笑)

しかし、伊集院氏は羨ましい。仕事で、この名リンクスに行けるとは。M社長!加賀屋創立100周年までは待てないから、適当に創立なんとか年記念で、「本棚」執筆のために、出張旅費出してくれませんか?駄目か。しかも、伊集院氏は、あの憧れの「夏目雅子」と再婚し、彼女と死別したあと、「篠ひろ子」と再々婚しているご活躍ぶり。くそー。こうなると羨ましいを通り越して、妬ましいな。M社長!旅費が無理なら、「夏目雅子」紹介してくれませんか?もっと無理か。残念。

「世の中で一番みにくいことは、他人の生活ををうらやむことです」とは、福沢諭吉先生の心訓です。反省しましょう。ちなみに福沢心訓とは、

一、世の中で一番楽しく立派な事は、一生涯を貫く仕事を持つという事です。

一、世の中で一番みじめな事は、人間として教養のない事です。

一、世の中で一番さびしい事は、する仕事のない事です。

一、世の中で一番みにくい事は、他人の生活をうらやむ事です。

一、世の中で一番尊い事は、人の為に奉仕して決して恩にきせない事です。

一、世の中で一番美しい事は、全ての物に愛情を持つ事です。

一、世の中で一番悲しい事は、うそをつく事です。

の7カ条ですが、これ、ゴルフにも通じますねぇ。

一、世の中で一番楽しい事は、一生涯を貫くゴルフという趣味を持つという事です。

一、世の中で一番みじめな事は、ゴルファーとして教養のない事です。

一、世の中で一番さびしい事は、次のゴルフの予定がない事です。

一、世の中で一番みにくい事は、他人のゴルフをうらやむ事です。

一、世の中で一番尊い事は、同伴メンバーの為に奉仕して決して恩にきせない事です。

一、世の中で一番美しい事は、全てのコースとキャディーに愛情を持つ事です。

一、世の中で一番悲しい事は、ゴルフのスコアをごまかす事です。

「加賀屋ゴルフ心訓」とでもしておきますか。

さて、4時間近いドライブを友人に押し付け、深夜にインバネスのさらに北にあるB&Bに到着し、明けて、土曜日。イギリスは、今日からエリザベス女王陛下在位60周年記念「ダイヤモンドジュビリー」とかで、4連休です。なので、観光地は大混雑。B&Bも予約するのに苦労しました。当然、ドーノックも混んでおり、スタートは16:20です。

昨日の長時間ドライブで疲れていることもあり、庭先でウサギの親子が草を食むファンシーなB&Bで、怪しい東洋人がふたり、ゆっくりとおいしい朝食を取りました。私も、ウサギの親子に優しい目線を向けていたのですが、周囲の西洋人から見ると、「あの東洋人は、あの可愛いウサギを獲って食べようと、狙っているんじゃぁないかしら」と思われていたかもしれません。怪しさ満点です。

夕方まで、ウサギを見ていても、怪しさが増すばかりなので、何かしようか。ということになりました。と言っても、スコットランドの田舎で、やることなんて、ありません。やっぱり、ロイヤル・ドーノックをラウンドする前に近くのゴルフ場で、1ラウンドすることにしました。インバネス近郊にも名リンクスは数多く、ロイヤル・ドーノックに負けないくらい評価の高いネアン(Nairn)や、コースの中に羊が放牧されているブローラ(Brora)、鉄鋼王カーネギーが作ったスキーボー・キャッスル(Skibo Castle)など目白押しです。しかしながら、いずれも一杯でスタートが取れません。それでも、テイン(Tain)でスタートが取れました。

友人は、昨日のラウンドとその後の運転で精魂を使い果たし、楽しみにしているロイヤル・ドーノックでのラウンドの為に、テインでのラウンドはパス。私、一人でラウンドし、終わるころにゴルフ場に迎えに来てもらうことにしました。

テインゴルフクラブは、1890年にオールド・トム・モリスがデザインした18ホール6404yPar70、OUTとINにPar5がひとつずつ、Par3がふたつずつ。残り12ホールがPar4というセッティングです。ドーノック対岸の雄大な砂丘にコースが展開しています。

1番「Road」はダラダラと上り。セカンドを道路を越えて打つPar4です。ティーショットはフェアウェイ右のファーストカット。まずまずです。しかし、セカンドからの距離が見当たらず、しかも打ち上げになっているため、グリーンは見えず、道路とグリーンの間はブッシュで、ピンの頭しか見えません。「まぁ、150yくらいかな?」と思って打ちましたが、ボールの飛び方を見るとちょいと大きいかな?と、クラブを替えて、念のため暫定球を打ちます。行ってみると、グリーンに暫定球はありますが、最初のボールがありません。奥のバンカーにもなく、その先のマウンドにもありません。「この辺にあるはずなんだけど、、、」と探すも、見つからず。暫定球を1パットで沈めてボギー。まぁ、いいや。

Tain Garden

2番「River」3番「Knowe」4番「Long」と丘の上を進みます。この辺りは、ゴースのブッシュに囲まれて、丘陵林間コースの風情です。5〜9番までも丘の上。天気は良いし、遠くに海がちらりと見えるくらいで、暖かく、最高のコンディションです。前に二人組、後ろに二人組がラウンドしていますが、詰まるところも無く、気分良いラウンドです。スコアカードを見ると、9番までダブルボギーなし。パーが4つボギーが5つ。パー35なので、前半40。はご機嫌です。

なんといっても、ドライバーが絶好調。250yは飛んで、しかもまっすぐ。おいおい、すごいぞ。難しい9番をボギーで抜けて、10番「Garden」。素晴らしい眺めです。それまでも、コースの両側に「ゴース」と呼ばれるハリエニシダ(棘のある灌木)に黄色い花が咲いており、とてもきれいです。日本のゴルフ場で、両側に桜の並木があるコースがありますが、そこで花の季節にラウンドしているよう。10番「Garden」は、ティーグラウンドからは、このハリエニシダの茂みを越えて打っていきます。しかも、その後、満開のハリエニシダの花の間の小経を通ってフェアウェイに出ます。なんてまぁ、おしゃれな作りざんしょ。注意力が散漫になっていたのか、花にだまされたのか、ハリエニシダの茂み越えの1打目を打つと、フェアウェイ左のラフでワンバウンドした後、左のブッシュに入って行った模様。どうやら、左は見た目以上にフェアウェイが斜めに浅いようです。しかし、フェアウェイもハリエニシダ越しなので、距離感がつかみにくい。暫定球を右に打ち、花の小経を急ぎます。残念ながら、本日2回目のロスト。右ラフの暫定球を打ちますと、これまたピンにピタリ。ここもボギーで切り抜けます。11番「Alps」はセカンドからはグリーンが見えません。目の前には高さ10メートルはあろうかという二つの小山。この間を打っていくと、グリーンがある。というオールド・トム・モリスお得意の設計です。プレストウィックには、同じ「Alps」というホールと「ヒマラヤ」という名物ホールがあります。

Tain Alps

ブラインドホールなので、前の組が、パットが終わりグリーンが空くと、グリーン横にある鐘をカンカンッ!と叩いて知らせます。青空に鐘の音がカーンカーンッと吸い込まれるようです。380yからティーショットの250yを引いて、130y。グリーンがどうなっているのかわからないし、大きめに打つよりは小さめに打っても、山の裾からグリーンに転がり出るだろうと思って120y。ピッチングで打つといい感じ。いそいそと山を回り込むと、「あ!」という景色が広がっています。山の向こうは、グリーンと海。ここまで丘の上をずっとラウンドして海の存在が遠く感じていたのですが、オールド・トム・モリスは、ここで、海をドラマチックに登場させます。わざとグリーン手前に山を置き、オンしたのかどうか、確かめたくていそいそと山を回り込ませると、そこに、一気に海が広がっている。という粋な演出です。やられた!しかも、グリーンの先はすぐ崖。危ない危ない。無事2オンしたボールを2パットで沈め、パー。良し良し。

Tain Glenmorangie

12番は、右手に海外沿いに進む「Plaids」しかし、行ってみるとホール名が、「Glenmorangie」になっています。ティーグランドには「Glenmorangie」の大樽が。なるほど!「グレンモーレンジ」というスコッチがあります。湾の向こう側にそれらしき蒸留所の煙突が見えます。きっと地元の大企業である「Glenmorangie」が、コースの維持とかにお金を出して、そのお礼で、このホールのネーミングライツをもらったのね。ティーショットはフェアウェイどまんなか。セカンドもピン5メートル。これを、ドン!ときめてバーディ。よっしゃ!「グレンモーレンジ」で乾杯だ!

続く13番は牧場の中を行くPar5。羊に見守られる中、ナイスショット3回で、またピン3メートル。よし!と思えば、これが3パット(苦笑)。14番ボギー、15番パーと続いて、16番、17番は連続Par3です。ここまで7オーバー。3ホールを2オーバー以内なら70台。まぁ、Par70だけど。ところが、16番も17番もボギー。2ホールとも小川がくねくねと横切る難しいホールです。まぁ、Par3だから、グリーンに乗せちゃえば小川は関係ないけど、17番なんて、215yあるからね。17番のホール名にもなっている「Black bridge」を渡りながら、ひょいっと下を見ると、小川が茶色いウィスキー色。これは、スコットランドの一部の地方の特色で、泥炭層(ピート)を川が流れるとその色が流れ出て茶色くなるらしい。まるでウィスキーが流れているよう。「泥炭」は読んで字の如く、燃料として燃やすことができ、ウィスキーを作る時の燃料として使われるそうな。しかも独特の匂い(ヨードチンキのような)がして、それがウィスキーにも香りが移り、独特の芳香を醸し出すとか。うーん素晴らしい。

気分良く最終ホールは打ちおろし、絶好調のドライバーを一振りすれば、ボールは、どんどん転がって、427yなのに、残りはどうみても100yは無い。打ちおろしているし、70yと思ってピッチエンドラン、それでもボールはグリーンをオーバーしてクラブハウス前に転がり出た。ありゃりゃ50yしかなかったのかい?後50cmでOB。危ない危ない。アプローチを2メートルに寄せたが、最終パットをペロリと外してボギー。40-40で80。

Tain Boggey80

クラブハウスで、昼食を取りながら、友達を待っていると壁にコースの設計図が。よくよく見ると「Par70」の代わりに「Bogey80」との表示がある。昔は、パーではなく、ボギーが「標準」だった。という話を夏坂健さんの著作で読んだことがあったが、実物を見てびっくり。しかも、自分のスコアまで80だったこともあって、にんまり。

天気も良いし、スコアも良いし、スタッフは親切だし、こじんまりとしたクラブハウスと、雄大なコース。その割に粋な演出がそこここにあって、このコースはめっけものでした。どことなく、私のホームコースNカントリークラブに似ており、「スコットランドのNカントリークラブ」と勝手に命名したのでありました。このコースも、Nカントリーと同様、やればやるほど難しいんでしょう。

迎えに来た友人に聞くと、ひとりで「グレンモーレンジ」の蒸留所見学に行ったとのこと。「俺も見たよ。しかもバーディだった。」と言うと、怪訝な顔をしてましたが、i-phoneの写真を見せると納得。ふたりして、さぁ、いよいよロイヤル・ドーノックへ挑戦!というところで、紙数が尽きました。お楽しみは次巻に譲ります。(第23巻に続く)