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チーター オーストラリア支局長メルウェイ

先日、目土盛造さんの銭形平次を読ませていただきました。銭形平次なるゴルフでの悪名は誰もが知っている通り有名ですから、タイトルを見た瞬間に、どのような内容であるのかが分かってしまいます。
その人がどのようにしたのか、それを見た盛造さんがどのように対処したのか、興味を持って読み進めました。

チーター(ズルをする人)は全世界に存在します。私自身オーストラリアに来てから2人、オージーのチーターを実際に見つけたし、過去にもさまざまなチーターにお目に掛かりました。
普段オージーとゴルフをしていますから、私の場合、日本人とのゴルフは少なく、メルボルン在住の人とは過去3年で11人、その内1回だけの人が4人ですから、本当に少ないと思いますが、実はこの中に2人いました。

決して見つけようなどとは思ってもいないし、出来ることであれば知らないで過ごしたいと思っています。私の場合、ボールのところに歩いていく間、それぞれの人のボール位置だったり、またボールがあるかなど見ていますが、ボールまで行くと、ピンの位置、風向き、ライなど考えているので、その間、周りを見ることはありません。
大体彼らの特徴として、見つかりたくはありませんから、ことを始める前には良く周りを見ているものです。私は自分のことをしていますから、よし大丈夫。と思うのでしょうが、長年の習性として、私が打つ前に、前後の人が打とうとしていないかどうか、ぐるっと一通り見回してから打つので、そんな時に決まって見つけてしまいます。

本来正直でまじめな日本人のはずですが、そういった人は以外に多く存在しています。ではどうしてなんだろうと考察してみると、日本独特の習慣でしょうが、6インチルールを外すことは出来ません。プライベートのコンペの多くは採用しているのではないかと思いますが、やはりボールを触る、動かすという行為が当たり前になっていると、ついつい動かしたくなるのは人情でしょう。

私がこちらに来てすぐの頃、知り合いのOさんから名門コースに誘われました。その人の友人Hさんがメンバーで、その人のことを知り合いからは、80歳を超えているのに、毎日ゴルフをして、年間400ラウンドをする、スーパーおじいちゃんと聞いていました。
細身で背も高く、背筋も伸びています。足取りも軽快ですから、颯爽と現れたHさんは、おじいちゃんというイメージには程遠く’こうじゃなきゃ、毎日歩いて400ラウンドは出来ないでしょ”そんな印象でした。

スタート前にお話を聞きましたが、ゴルフに対する情熱と、それを遂行するために行っている、平素からの健康管理には、聞いていて頭が下がります。私も去年300ラウンドをしましたが、毎日毎日ゴルフで、その途中には10連荘、11連荘などとなる時があり、そんな時はもう身体はだるいし、今日はやりたくないと何度も思いました。ですから400ラウンドがどれほど過酷なのかが良く分かります。大体において、今から30年後の自分を想像した時、半分の200ラウンドとて、難しいのではと思いますが、もっといえば、数年後にはカートでも買ってやろうかと思っているぐらいですから、ゴルフがどうのこうのでなく、そこまで生きているのか?と考えるだけでも、確立は相当低いのではないでしょうか・・・

1番ホール、既にセカンドを打ち終わり、私のやや前に3打目を待つHさんがいます。
もっとも、この時点では何1つ疑ってはいませんから、私はセカンドを打った後、Hさんの3打目に目をやりました。ボールはグリーン手前、右サイドのラフへ・・・近くにOさんが来たので、たわいもないことを話しながらグリーンに向かって歩いて行きました。Oさんは2打目を左のバンカーに入れたので、私はそこでバギーを止めて、右サイドにいるHさんを見ました。ラフに打ち込んだボールは、上部がかすかに見える程度です。まもなくOさんが”打ちま〜す”と声を掛けました。
Oさんのバンカーショットを見た後、今度はHさんを見ると、既にアドレスに入っていました。ここまでは全く普通の光景です。しかしそこには明らかな、不正の跡が見て取れます。何せ少し前に見たときは、ほとんど埋っていたはずのボールが今度はくっきりと見えていたからです。

グリーンに上がった時、私がピンを持ってパターをする人をアテンドしていた時、何やら後ろに気配を感じたので、思わず振り返ると、Hさんがそこで固まっています。まるで子供の頃やった、達磨さん転んだの鬼が数を数え終わって振り向いた時、皆が一斉に固まるしぐさです。
私が背後に感じた気配は、Hさんがマーカーをパターのヘッドで引きずりながらピン方向に動いていたからです。私はHさんが最初にマークした位置を知っていますから、4mは動いているでしょう。
それからのラウンド次から次に業が出来てます。ロストボールなど絶対にありません。必ず見つかります。それが打ち込んだところとかなり離れていても・・・
 相撲の舞の海が技のデパートならHさんは業のデパートです。長年ゴルフをして色々な人とラウンドしましたが、あれだけズルをしまくる人を私はしりません。あるホールでベアグランドにもじゃもじゃの短い草がところどころに生えていた中に打ち込みました。もうその頃は私も呆れ果て、なるべく見ないようにしていたのですが、素晴らしいボールを打ったので、どうなってんだ!と、そんな思いでしたが、どうでも良いので、そのまま歩いていくと、Oさんが寄ってきて、これだよ、と私にティーを見せました。・・・・・なるほど

Hさんは現在85歳だと思います。あれ以来、一緒にやっていないので・・・Oさんが言っていましたが、今でも同じペースでゴルフを続けているそうです。本来であれば、誰からも尊敬されるべきゴルファーのはずですから、とても残念です。
HさんはOさんの入っているゴルフ場もメンバーになっているのですが、そこでは何と3回、ウォーニングチケット(警告書)を貰っているそうです。本来、こんなものをもらうと恥ずかしいので、やめることになると思うのですが、全く意に介してないようです。

OさんからHさんについて話しを聞いたことがありますが、見て見ぬ振りだそうです。Oさんの話だと、余りに有名で、そのことはメンバーなら全員知っているし、他にも名門のメンバーになっている日本人ということで、彼のチーターぶりはメルボルンの人はみんな知っていると、Hさんの話が出ると、プロショップのプロ達までが笑い話にしているそうです。
自分より年上の人に対し、そんなことは言えない。もし言ったとしても、病気なのだから絶対に治らない。自分が入るときの紹介者になっているから、ゴルフをしないとも言えない。とこれが結論でした。
実際にどう対処すればと考えると、とても難しい問題です。私の場合、同じゴルフ場のメンバーでもないので、2度とやらないと思うだけですから簡単ですが、仮にOさんの立場ならどうするべきなのか・・・

今年の始め頃、ロングアイランドで事件がありました。その人はティーショットを曲げ、隣のホールのバンカーに打ち込んだ際、ボールを投げて出し、そのまま打ってしまったところを、そのホールでプレーしている人に見られてしまいました。
結局、その人は3ヶ月の資格停止になりましたが、そのグループは普段から一緒にやっていたこと、その上、その人とその友達は、それまで何度かペアゲームで優勝したりしていたものですから、過去にも不正があったのではないかと、他の人達まで疑いの目で見られるようになりました。

ここも日本とは大きく違うところなのですが、普段ゴルフ場でプレーしている人のほとんどがメンバーですから、このようなことがあると、一瞬にしてメンバー全員の知るところとなってしまいます。しかも、各ゴルフ場は普段から男女とも対抗戦などで交流があるので、他のコースにまで、たちどころに広がってしまいます。現に私がメンバーになっているゴルフ場に行った際、それぞれのゴルフ場で、その事件が話題になっていたし、事実関係まで伝わってるのですからちょっとビックリです。
私の住んでいるところから、シティーまで約40キロ、その中に限定したとしても、パブリックを除いてメンバーシップだけで60コースはあるでしょう。
ほとんどがペナント(クラブ対抗)に参加し、それぞれメンバー同士、コースが密接に交流しているのですから、良きにつけ悪しきにつけ伝わります。
ゴルフ場主催のコンペも週に4回はあると書きましたが、それぞれの結果は翌日の新聞に全て出るので、他のコースに行って優勝した場合でも、次の日ホームコースに行けば、会う人会う人から、おめでとうと声を掛けられます。
ですから、ひとたびこのようなことをしてしまうと、酷いことになってしまいます。それまで一緒にやっていた人達もやらなくなってしまいます。その後も同じメンバーで組むことが認められなくなるので、正確にはやれなくなってしまうのですが・・・


日本だと違うコースに移るという手もあるでしょう。ところがこちらではそれが出来ません。これだけゴルフ場同士で交流があると、仮に移ろうとしても、必ずメンバーからクレームが出ると分かっているので、ゴルフ場も書類さえ受け取ることはありません。
仮にやめてしまうと、何処にも入れなくなるだけでなく、今度は戻ることも出来なくなるので、甘んじて罰を受けなくてはなりません。
あれから、もう半年以上経過していますが、週に3,4回は来ていた回数も減り、ゴルフの後、必ず皆と飲んでいた2階のレストランに来ることさえ未だありません。彼の奥さんもメンバーですが、やはりレストランにはあれ以来、来ていないようです。
私は彼と2度一緒にゴルフをしましたが、そんな素振りは一度もなかったのですから、きっと魔が差してしまったのかもしれません。
ゴルフ場で会った時、挨拶こそしますが、彼も気がねしているのか、それ以外の話をすることはなくなりました。


話を戻しますが、Oさんは未だ週に1、2度Hさんとゴルフをしています。そのゴルフ場は日本企業の法人メンバーがいることもあり、毎回、日本人同士でラウンドをしています。ゴルフに関して言えば、Oさん自身には全く問題はありませんが、そんなことを知らない他のメンバーは、彼らをどう思っているのかと考えると、今の形で続けるのはよくありません。日本人同士でやるなとは言いませんが、毎回一緒にやるのではなく、日本人同士でやる回数を減らす、2人は日本人で2人はオージーを入れるなど、工夫をすることが、良い方法だと思うのですが、やはり日本人同士は楽なのか、どうしても一緒になってしまうようです。
例えオージー同士であっても、何時も同じグループでラウンドしている中で、不正が発覚してしまえば、一緒にやっている人達でさえ白い目で見られてしまうのに、それが日本人でしかも、その中には札付きだと誰もが知っている人が、毎週一緒にやっているのでは、何をか言わんや・・・
またこうなってしまうと、他との接点がなくなるので、孤立していく羽目になり、情報も入らなくなってしまいます。


私の結論としてはこうなります。

組み合わせなどで一緒になった場合、競技会でなければ、好きなようにやってもらう。気分は良くありませんが、下手に関わると、余計気分が悪くなるので、触らぬ神にたたりなし。
競技会の場合は指摘せざるを得ませんが、その場合ウイットネス(証人)が必要です。彼らは1度に限らず、何度でもやりますから、他の競技者に話して見てもらうのが良いと思います。一人だけで言っても、そんなことはしていないと、しらを切られたら、証明が出来ないので、うやむやにされてしまうケースがほとんどです。他にウイットネスがいない場合、うやむやも仕方がありません。何故なら、一人だけの言い分を認めるとなった場合、逆に、あいつが嫌いだからなどと、作り話をされる場合があるからです。

日本と違ってオーストラリアでは、競技でない場合、組み合わせになるケースはまずありません。競技のない日はガラガラですから、一人でもスタートが出来ます。つまり、ほとんどのゴルフが競技会になるのですから、そのような場面に遭遇した場合、指摘せざるを得なくなります。
これを見逃している場合、同罪ということになるので、自分はズルをしていないからという論法は通じません。はっきりと言って、距離を置くべきでしょう。どうしても一緒にやりたいなら、競技会には参加をしないことです。だからといって周りの評価は変わりませんが、Hさんが競技会で良い成績を出すたびに、陰口を聞かされるよりマシでしょう。

Oさんはこちらに住んで25年、普段メンバーで一緒にやっている人達も、駐在でなく皆さん十数年住んでいる永住者です。
どうして集まりたがってしまうのでしょうかねぇ・・・・


※写真はチーターとは関係ないものです。コースの修復等はボランティアで行いますが、理事(什器を運転している人)が自らゴルフ場で作業しています。